東日本大震災の復興・復旧をめぐっては非常に大きな資金が動き、様々な利権が絡み合っている。こうした利権構造の中で、暴力団が暗躍しているという話は多く聞かれる。
特に、危険の伴う福島第一原発関連の仕事に関しては、日雇い従業者の派遣というような形で、暴力団関係者が関与しているのではないか、という情報が多く流れていた。冒頭の入れ墨をしている労働者の写真なども、疑惑の証拠のひとつとも言える。
だが、こうした話は多く聞かれるものの、その実態がつまびらかになることは少ない。
しかし、5月下旬に被疑者が逮捕された「原発復旧工事にかかる指定暴力団住吉会傘下組織幹部による労働者派遣法違反事件」は、そうした暗部の一部を垣間見ることができる。
この事件で逮捕されたのは、指定暴力団住吉会住吉一家丸唐会神谷四代目二代目原下組幹部。被疑者は、福島県二本松市で「大和田工業」という人材派遣業を営んでいる。
大和田工業は、2011年5月16日から7月22日までの間、電気工事を営むA工業に、大和田工業が雇用した労働者4名を現場作業員として派遣し、A工業の指示の下、派遣された労働者は福島第一原発の災害復興作業現場で、分電盤設置などの建設業務に従事した。
この事件は、福島第一原発の災害復興現場から派遣された労働者の1名が逃避したため、大和田工業が恐喝事件を起こしたことで明らかになった。
派遣された労働者が災害復興現場で従事したのは、建設工事のひとつである電気工事であり、労働者派遣法で労働者の派遣が禁止されている建設業務に従事させれられていたことが明らかになった。
大和田工業とA社は、大和田工業が雇用した労働者を、いったん下請けのB社に出向させて、B社の社員としてA工業に受け入れさせていた。
しかし、労働者派遣法の、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別に関する基準」によれば、「雇用する労働者の労働力を自ら直接利用し、請け負った業務を自己の業務として独立して処理するものでない限りは労働者の派遣に当たる」と規定されており、A工業とB社の契約は偽装請負であり、大和田工業とA工業の間で実質的かつ直接的な労働派遣契約が行われ、それが実行されたと福島県警は判断した。