森林組合は追い風と意気込むが……
FITのスタートで沸き立っている地域の一つが、東北地方だ。
例えば、24億円を投じて出力約5000kWの木質バイオマス発電所を建設した「グリーン発電会津」(福島県会津若松市)は、7月10日から東北電力への売電を開始し、年間約10億円の売上を見込んでいる。同社に燃料の林地残材を納入している会津若松地方森林組合は、「これまで山に捨てていた残材を、商品として毎月5000tも納入できる。願ってもない救いの手だ」と喜んでいる。
また、約3000kWの木質バイオマス発電所を建設し、06年からソニーに売電している能代森林資源利用協同組合(秋田県能代市)は、「バイオマス発電は山の再生に繋がる。FITスタートを追い風に、今こそ事業を拡大させたい」と意気込んでいる。
ブームに乗り、煽る地元メディア
東北圏の地元紙「河北新報」は、「(FITのスタートで)安価な輸入材に押されてきた林業関係者からは、『東北の豊富な森林資源が宝の山になる』との声が上がっている」と、こうした動きを煽っている。
資源エネルギー庁の調査によれば、RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)に基づくバイオマス発電の認定設備件数は、3月末現在で377件で、
・認定設備の総発電出力(設備容量):2007万600kW(3月末現在)
・11年度の合計記録量(年間発電量):35億7923万1000kW
であり、再生可能エネルギー全体に占めるバイオマス発電の比率は、半分近い48.2%となっている。
意外に乏しい発電用バイオマス資源
わが国のバイオマス資源のうち、使いやすい建設廃材などは、すでに100%近く既存のバイオマス発電所で消費されている。今後、バイオマス発電所の設備増強や増設などに対応して供給可能な資源は、実は林地残材(山林に放置された間伐材や倒木)と農作物非食用部にほぼ限られている。このうち、熱量など資源品質の良いのは林地残材だ。
では林地残材でバイオマス発電を拡大できるか? というと、ことはそれほど単純ではない。林地残材は「利用できない」から山林に放置されているのだ。