「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/8月4日号)。
7月1日、「再生可能エネルギーの全量買取制度(FIT)」がスタートした。発電事業者が太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどで起こした電気を、20年間、固定価格で買い取ることを電力会社に義務づける。固定価格の最高額は、1キロワット時当たりの太陽光発電が42円、風力発電が23.1円、地熱発電が27.3円である。太陽光発電の42円は飛び抜けて高額で、そのためさまざまな企業がこの事業に続々と参入して、今や「メガソーラー・バブル」のような様相を呈している。
だが、太陽光発電の出力は小さい。
7月1日に再稼働して世間を騒がせている関西電力大飯発電所3号機の最大出力は、118万キロワットもある。最近建設された原子力発電は100~130万キロワット、火力発電は30~100万キロワット、水力発電はダム式揚水発電を除けば最大級でも30~50万キロワット程度というオーダー。水力については出力1万、2万キロワットクラスの小型発電所が、戦後盛んに建設された多目的ダムに併設されて、全国いたるところにある。
それに対し、昨年12月に稼働を開始した国内最大級のメガソーラー、東京電力扇島太陽光発電所(川崎市)の最大出力は1.3万キロワットで、広大な敷地に太陽光パネル6万4000枚を敷き詰めても、柏崎刈羽原発6号機、7号機(ともに停止中)の130万キロワットの100分の1にすぎず、山奥の多目的ダムにある小型水力発電所1機分程度にしかならない。
しかも、太陽光発電には「出力不安定」という本質的な欠点がある。公表されている最大出力は、太陽光パネルが固定されている限り、90度に最も近い角度で太陽光が当たる季節と時間に、天気が快晴でないと得られない。パネルの角度を、春分・秋分の日の太陽高度に合わせると真夏や真冬は出力が低下し、パネルの向きを正午頃の太陽の方向に合わせると、朝や夕方は出力が低下する。曇りや雨の日はもちろん、太陽が一時的に雲に隠れただけでも出力は低下し、夜間はゼロになる。
買い取る電力会社の立場でいえば、こんなに頻繁に出力が変動する1〜2万キロワットの小規模な電源が、何十、何百と存在したら、電力のコントロールが非常に難しくなる。義務づけられたとはいえ、「電力の安定供給に支障が出るから、メガソーラーの電気はいりません」と言いたくもなるだろう。
電力会社の機嫌を損ねて、買取を拒否されたら一巻の終わり
いや、実は言えるのだ。
7月1日に施行された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」によると、電力会社は「電気事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき」は買取を拒むことができる。また、買取契約をしていても「電気の円滑な供給に支障が生ずるおそれがあるとき、その他正当な理由があるとき」は、接続を拒むことができるようになっている。