「ソフトバンクは成功例」危ない300社が落ちたLBOの罠
(「同社HP」より。)
いわゆる、黒字倒産になったのは買収資金をLBO(レバレッジド・バイアウト=買収先の資産やキャッシュフローを担保に資金調達するM&Aの手法)で調達していたためだ。資金が流出し資金繰りが急速に悪化したのが原因。LBOに潜むリスクが一気に表面化した、“LBO倒産”だったわけだ。
ベネックは8月20日、1回目の不渡りを出し、同月30日に債権者説明会を開き私的整理への協力を求めた。それが、一転して民事再生法を申請した理由について、民間信用調査会社の幹部は「債権者がベネックの破産を申し立て、大川社長を刑事告発する動きを見せたため、先手を打って民事再生法に駆け込んだのではないか。これに備えて、会社代理人の弁護士を9月5日に解任して、刑事事件に強いと評判の弁護士と交代しています」と話す。
これまでの経緯を振り返っておこう。ベネックの再建に携わっていた企業再生ファンド、ネクスト・キャピタル・パートナーズは「再生のメドがついた」として保有する全株式を、今年3月にダイセンホールディングス(HD)に譲渡した。ダイセンHDは、福岡市と東京・銀座で料飲ビルを経営しているダイセンビルディングが、ベネックを買収するために設立した会社。ダイセンHDはベネックの資産を担保にLBO方式で13億円の買収資金を調達。ベネックはダイセンHDの100%子会社となり、新しいオーナーになったダイセンの大川義廣氏がベネックの新社長に就任した。
ところが、半年もたたない8月20日に3億3500万円の1回目の不渡りを出した。
8月30日の債権者説明会では「ダイセンがLBO方式で調達した買収資金を返済するため、ベネックがダイセンに13億円を貸し付けた。これでベネックの運転資金が底をついた」と説明された。大川社長は「『ベネックは資金が潤沢にあるから』と持ちかけられてLBOを決断した」と釈明したという。
9月7日付で債権者に送付された文書のニュアンスは違う。“高金利のSBIキャピタルソリューションズからの買収資金の借り入れを一括返済した。現預金が一時的に減少したが、その時点では、資金繰りに窮することはないと経営判断していた”