急場しのぎ、関係各社は無関心…ルネサス官民共同救済案の内実
9月22日付日経新聞。
『トヨタ、パナも嫌々? ルネサスの官民共同救済案に黄色信号』
デジタル家電の販売不振が、さらに不透明さを助長
経営再建中のルネサスエレクトロニクスに対して、官民投資ファンドの産業革新機構(INCJ。以下、機構)が、トヨタ自動車やパナソニックなどの国内企業と共同出資案を検討していることが明らかになった。
関係者の話によると、経産省は今回共同出資を検討中と報じられた企業以外にも、複数の企業へルネサス再建のための出資を打診したが、難色を示されたといわれる。
元凶は、マイコンと並ぶルネサスの主力製品であるシステムLSIだ。複数の機能をワンパッケージ化してデジタル家電の心臓部になる重要な半導体だが、日本メーカーのデジタル家電の販売不振で、市況回復の見込みが見えてこないのである。LSI事業は赤字が続いており、この事業の切り離しを模索するが、現時点ではメドが経っていない。「マイコンは重要だが、とてもではないが深入りしたくない」――それが各社の本音だ。
急場しのぎに過ぎず、年末には資金ショートの懸念も
結果、当初トヨタにも断られた経産省は、大株主3社の日立、三菱電機、NECにルネサス支援を再要請。資金が塩漬けになる可能性の高い出資は断られたが、計500億円の融資同等の支援をとりつけた。ただ、ルネサス社員の表情は暗い。「急場しのぎにすぎない。年末には資金がショートするのではとの噂が、社内では広がっている」と語る。
新たなスポンサー探しが急務の中、支援に手を挙げたのが、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)。これまでも米フリースケールセミコンダクターの再建にかかわるなど、半導体関連では広く知られる。KKRは1000億円出資の条件として、工場再編などのリストラや役員の総退陣を突きつけた。
米KKR登場で息を吹き返したルネサス再建
経産省と機構にしてみれば、KKRの動きはうれしい誤算だったに違いない。KKRが名乗りを上げたことで、ルネサス救済の「大義名分」ができたからだ。KKRはこれまでも再生後に株を手放してきた。ルネサス再生も同様のスキームが見込まれるが、国内を見渡しても、その引き受け手は見当たらない。つまり、外資への技術流出は必至だ。KKRの登場で「技術を守る」という旗を掲げられるようになったことで、「官民ファンドの機構を軸に、複数の企業からも出資を募る」という枠組みに至ったわけだ。
今後の焦点は、この枠組みが成立するかどうかだろう。まず、総退陣を突きつけられているルネサス首脳陣にしてみれば、まさに渡りに船であろう。「全員のクビをいきなり切るような真似は絶対にしない」(機構関係者)からだ。経産省や顧客が気にする「技術を国内にとどめる」という点でも意味があるだろう。
一方、今回の枠組みは、本来重視されるべき「ルネサスの再生」という点では、時計の針を戻す動きになりかねない。「既存のルネサスを取り巻くプレイヤーに、ルネサス再生の意思はあまり感じられない」(電機業界のアナリスト)のが現実だからだ。
大株主は、持て余していた株放出でひと段落?