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『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』著者・開沼博インタビュー

震災後増殖した、“正義”を騙る浅はかな知識人や市民を疑え

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『「フクシマ」論』刊行以降、注目の人物に。「週刊朝日」では
シリーズ企画「21世紀の神々」のひとりとして
紹介された。
 東日本大震災から1年半がたつ。そうした中、ただ一人で震災前から福島に作られた原発を通した戦後社会論を記述し続け、昨年6月出版した『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)により一躍脚光を浴びることになった開沼博氏。

『「フクシマ」論』については過去のインタビューを参考にしていただきたいが、開沼氏はその後も地道に福島に通い続け、現地の人々の声を聞き、さまざまな媒体で評論、エッセー、ルポを発表し、対談を行ってきた。それら震災後の活動をまとめたのが、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)だ。この本に託した思い、3.11以降の「日本の変わらなさ」などについて聞いた。

――『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』、早速話題になっているようですね。朝日新聞(9月27日朝刊)でも論壇ページで取り上げられていました。丸善に行っても、いい場所に平積みになっていましたよ。

開沼博氏(以下、開沼) はい、ありがとうございます。おかげさまで、既に多くの人に手に取っていただいているようです。

――今回の『フクシマの正義』は『「フクシマ」論』以来の単著ですね。この間の活動は、どのようなものでしたか?

開沼 昨年度は、共著・共編著など、複数の書籍を作るのに関わっていました。原発事故によって避難した方がどのような状況にあったのか、若手の社会学者の論文をまとめた『「原発避難」論』(明石書店)やワーキンググループのメンバーとして関わった、いわゆる民間事故調の報告書『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。あと、『地方の論理』(青土社)。これは前の福島県知事である佐藤栄佐久さんとの対話形式で、原発事故以前の福島が抱えた課題や、掲げられていた理念・政策をオーラルヒストリー的に聞き、まとめたものです。

――『地方の論理』は、「今後の日本のあり方」を福島の歴史から掘り起こそうとするというのがテーマでしたね。

開沼 その通りです。佐藤栄佐久さんは今から10年ほど前、福島県知事在任中に原子力政策に疑問を呈する施策を打っていた。2000年代前半からすでに、日本社会と原発の抱える課題と真正面から向き合っていました。ただ、『地方の論理』では、あえて原発の話をしませんでした。それは、「原発」の話そのものよりも、「原発についての政治」の、今から見れば、妥当な判断の前提条件の話のほうが重要だからです。

 地方の首長が「原発に疑問を呈すること」は、10年前には「突飛なこと」でした。しかし、震災後、その前提は大きく変わり、今となっては彼の判断は「予言的なこと」となりました。では、なぜ震災前にそのような思い切った判断をできたのか。その政治の背景には、いかなる社会的背景や個人的な思想があったのか、解き明かしたかったんです。

――「古きをたずねて新しきを知る」的な……。

開沼 「福島のことを知ろう」とか言う人は腐るほどいるんですが、そこで目が向けられるのは「原発・放射線」に関することばかり。いやいや、「福島=原発・放射線」っていう認識で「福島のことを知ろう」とか言われても、それってここ1年のことにすぎないですから、と。っていうか他の地域にだって「原発・放射線」の問題はある。本当に解決すべき課題やその解決策の芽は、いくら「福島=原発・放射線」を掘っても、ごく一部しか出てこないんです。