9月19日付日経新聞より。
証券口座数、預かり資産は業界トップレベルを誇り、「オンライン証券・サイトの使いやすさランキング第1位」(ゴメス・コンサルティング調べ)であるネット証券のパイオニア・マネックス証券創業者であり、現在CEOを務める松本大氏。そんな松本氏が、アメリカの日本化、尖閣問題、そして感慨深いある新聞記事を通じて、コミュニケーション/交渉の機微について考察します。
New Wave of Workers Tries Novel Approach: Save More(邦題:貯蓄に励む米国の若者 親世代の失職や住宅差し押さえを目にして) – THE WALL STREET JOURNAL(9月24日)
アメリカの日本化進行が激しい。
年金問題、不良債権問題、低金利政策。日本は先進国の問題を展示する、未来から来たミュージアムのようである。この記事は、国の財政や銀行のバランスシートの問題だけでなく、個人のバランスシート、さらには若い世代の個人の考え方や行動パターンまで日本に似てきていることを示唆している。この先はどうなるのだろう?
日本は成熟が進み Disruption が掛けられなくなってしまったステージに入った国として、いまだ知られていない新たな展開を生み出し、世界に見せることができるだろうか? 太平洋の向こう側の記事を読み、我が国の未来に思いを馳せる記事。しかし日本の政策決定者は、そんな考えを持っているのだろうか。
日本AV女優の「釣魚島は中国領」に中国人「DVD全部買うぞ」 – 週刊ポスト(10月5日号)
不謹慎な記事選びといえなくもないが、コミュニケーションの機微を伝える記事。私は英語の交渉ごとはもちろん自分で話して自分で聞いて、わからなければ聞き直して行っている。それでももし不明な部分があれば、信頼できる社員に手伝わせるが、任せることはしない。交渉の主語は自分である。中国語で交渉する時も然り。私は中国語はできないが、挨拶だけは自分で中国語で行い、相手の目を見て、プロの同時通訳を左に置くと共に、中国語のできる社員を右に置く。できれば複数。
しかし、ここでも主語は自分である。言葉を他人に任せることは危ない。自分のできない言葉だから、プロの通訳を置いてもさらに、ダブルチェックと牽制のために補助を入れる。生の言葉の重要さを、まざまざと教える記事。
旅先で荷物開けたら「ニャー」、なぜか空港のX線検査もくぐり抜ける。 – ナリナリドットコム(9月21日)
空港のX線検査というのは、どうも怪しい。対象となる人によって随分やり方やその深度が違う気がする。それ以上に違いを感じるのは検査をする人、空港、国の違いである。近隣の某国の検査はかなり厳しいが、そのやり方や内容を見ると、張りぼてというか、かたちだけのような気がする。各国空港X線検査の実際のチェック能力・実施レベルの比較のようなスタディはないものだろうか? お国柄が見えてきそうな気がする。アメリカも、そろそろ平和ぼけしてきたかなと思わせる記事。
Paid Death Notices – The New York Times(9月30日)
これはこのコーナーに取り上げるのが適切か、はなはだ不明ではある。記事ではない。死亡広告である。しかも有料の。
ただし、あのニューヨーク・タイムズである。単語数約400、文字数約2000、かなりの分量である。彼女は私の恩師の奥様であるので、かなりのバイアスも掛かっていると思う。しかしこのような記事を出すアメリカ人の気質と、このような記事を死亡広告とはいえ受け入れるアメリカ・メディアの性質が、私には感慨深く興味深い。文化は縁にある。そして文化を解することは、コミュニケーションの基礎的栄養である。新聞は端から端まで読まないといけないですね。
御冥福をお祈りします。