栗原氏は、戦後尖閣諸島の購入に一番熱心だったのは第68代の大平正芳首相だったが、急死したため、その後は頓挫。中国側から350億円以上で購入するとの打診があったことも明らかにした。これまで語っていない話として、「鉱業権は那覇在住の人が所有。日商岩井等が、その鉱業権を権利者から任されている」と発言した。これをきっかけに、尖閣諸島ビジネス関連の筆頭として、兜町で日商岩井の後身である双日に関心が高まっている。
民族派を自称する栗原氏は、民主党政権の下では「国に尖閣諸島を売らない」と明言。とっておきの話として、鉱業権の所在を明らかにしたわけだ。鉱業権とは「鉱業法の指定により、政府の登録を受けた一定の土地(鉱区)で鉱物を採掘し、それを自己のものとする権利」(広辞苑)。
開発関連権の所有者は、1973年11月に日商岩井を中心に旧三和銀行グループが設立した、うるま資源開発。同社は同年に、尖閣諸島周辺沖合の「先願権」(一番先に掘る権利)を鉱業権者の個人から譲り受け、以来、その権利を保有している。うるま資源開発の資本金は1億円。出資比率は、双日72.2%、コスモ石油21.9%、アラビア石油5.2%、大阪ガス0.5%など。
うるま資源開発が先願権を取得したのは、第一次石油ショックの最中。東シナ海の東側の日本の領海での石油開発に期待をかけたもので、うるまは試掘権の設定を日本政府に申請。帝国石油(現・国際石油開発帝石)、石油資源開発、芙蓉石油開発も同調した。
だが、政府は中国への配慮から申請を棚上げしたまま、現在に至っている。このため尖閣諸島周辺の探査はほとんど手つかずの状態。試掘すれば中国からの激しい妨害行動が予想されるためである。
うるま資源開発の社長、会長として30年以上も東シナ海開発に取り組んできた元日商岩井副会長の荒木正雄氏は07年当時、メディアの取材に対して「中国は自国の海にするため作戦を練り、着々と手を打ってきたのに、日本はただ手をこまねいているだけです」と国の姿勢への落胆を口にしている。