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「真実を書けば誤報になる」という政府の罠にかかったメディア

なぜマスコミは杉本元財務次官の公取新委員長内定を報じない?

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マスコミは首相官邸の策略に嵌められた?
(「wikipedia」より)
 民主党幹部によると、空席が続いている公正取引委員会の次期委員長に、元財務事務次官・杉本和行氏の就任が固まったという。政府・民主党の幹部の間ではすでに内々に合意ができているが、国会同意人事のため両院の議決を経なければ就任できない。ところが、ねじれ国会の中で同意人事が半ば政争の具と化しており、同意を得られるメドは立っていない。

 公取の委員長は、10年にわたって務めた竹島一彦氏が9月末に任期を終えて退任。その後、民主党政府は国会に後任人事案を示していないため、1カ月以上にわたって委員長が不在という異常事態が続いている。

 民主党が人事案を提示できないのは、国会を通過する見通しが立たないためばかりではない。民主党が野党時代の07年に自ら主導して決めた、「マスコミに事前に報道された場合は国会提示を受け付けない」とする国会同意人事のルールに手足を縛られているためだ。候補者を野党に根回しすれば、当然、新聞記者の耳に入り、新聞記事になる。その段階で、その候補者は「ボツ」になるわけだ。

 しかし、実は杉本氏をボツにできない理由があるのだ。杉本氏は1950年生まれの62歳。兵庫県出身で、08年7月から09年7月まで財務次官を務めた。公取委員長は今や財務省OBの貴重なポストで、“待命”状態の次官OBをなんとか後任に据えたい財務省の思惑がからむ。現在、みずほ総合研究所理事長を務める杉本氏は、その“待命”次官OBの代表格。その杉本氏が国会に拒否される事態だけはなんとか避けたいというのが、財務省と財務省に支えられる野田佳彦内閣の思いなのだ。

 というのも、杉本氏の後の事務次官だった丹呉泰健氏は、読売新聞グループ本社の監査役を務めている。新聞価格の値引きを禁じる「再販制度」をめぐって、公取委と新聞社は対立する関係にあり、丹呉氏を公取委員長にすれば、公取委が新聞業界の軍門に下った格好になりかねない。丹呉氏の後の次官は夏に退官したばかりの勝栄二郎氏で、大物の名前をほしいままにしているだけに、公取委員長では格下げの印象が強い。適任のOBがいないということになれば、他の省庁にポストを明け渡すことになりかねない。

●書けば誤報になる「本当のこと」

 新聞社やテレビ局もそんな財務省や首相官邸の思いを熟知しているため、政府が後任を杉本氏に決めている人事に気がついているのだが、書けないのだ。政府や国会が勝手に決めたルールなど無視して真実を書くのがジャーナリストだとは思うが、話はそう簡単ではない。今のルールでは、新聞が事前に書けば国会同意は消えるわけで、書いたら誤報になるわけだ。今のサラリーマン記者に、平気で誤報を書ける度胸のある記者などいるはずもない。こうして、「本当のことを書けば誤報になる」という罠のような政府の操縦術に、大マスコミはまんまとはまっているわけだ。

 公取委は企業に競争を促し、透明な市場を作ることで消費者の利益を守る、重要な役割を担う。他の役所や企業からも疎んじられることが多い委員長の役回りを務められる、腹の据わった人物が不可欠だ。公取委員長の人事を政争の具とし空席を許している国会は、国民の利益を守るという自らの使命を放棄しているに等しい。そんな国会のルールに縛られているマスコミも、情けない限りだ。
(文=編集部)

『採用基準』


公取委員長の採用基準は?

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