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新刊『火口のふたり』著者、直木賞作家・白石一文インタビュー

挙式までの5日間、抗いがたい性欲に身を任せるふたり

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『火口のふたり』(河出書房新社/白石一文)
「吐き気がするほどの性欲を感じた」
「私、賢ちゃんの身体をしょっちゅう思い出してたよ」

 刺激的なフレーズが帯に並ぶ小説『火口のふたり』(河出書房新社)が話題だ。

 著者は、2010年、『ほかならぬ人へ』(祥伝社)で第142回直木賞を受賞した小説家・白石一文氏。一連の白石氏の作品では、抜き差しならない男女の恋愛や人生のありさまに加え、文藝春秋の編集者としての経験などをもとに描かれる、会社やビジネスに身を置く人々の苦悩や生態がリアルに描かれるのが特徴だ。それゆえ、白石氏の作品には、ビジネスパーソンや経営者のファンが男女問わず多い。

 そんな白石氏に、最新刊『火口のふたり』の内容とともに、

「セックスの目的とは、言葉で足りないことを補うため」
「夫婦のために子どもは我慢すべき」
「家族、男女のこれからの形とは?」

などについて語ってもらった。

ーー物語の舞台は2014年。自らの不倫が原因で会社を辞め、起業した会社も芳しくなく、借金を背負い先が見えない賢治。賢治はいとこで幼なじみ、そして元恋人でもある直子の結婚式に出席するため帰省した福岡の実家で、7年ぶりに直子と再会します。そこで、直子から誘う形で、挙式までの5日間、2人はひたすらセックスを繰り返すことになります。まず、このような背景設定にした理由について教えていただけますか?

白石一文氏(以下、白石) これまでも「いかに生きるか」をテーマに作品を書いてきましたが、今回も同じです。ただ、東日本大震災を目の当たりにして、「いかに生きるか」に対する思い入れが、さらに強くなったということはあるかもしれませんね。

 私は、「いかに生きるか」ということを突き詰めていくと、その根源にあるのは、男女間の肉体関係、つまりセックスではないかと思っています。でも、男女がそこに至るには多くの障壁がありますね。知り合うにはきっかけが必要ですし、そこから、情報交換によってお互いを知るようになります。そういうプロセスを乗り越えなければ、オスがメスを獲得したり、メスがオスを誘い込んだりできない。しかし、生きるということはそういうことなのです。

 でも、きついですよ。そのきつさに耐えられない人も結構いると思います。それに、せっかく障壁を乗り越えてセックスまでたどり着いても、楽しいのは割と一時期でしょう。その結果として子どもができ、子どもができたら夫婦ではなくて、家族になりますね。夫婦でもあるけれども、家族の要素がすごく膨らみますよね。それで、どうすれば、そうした「煩わしさ」を捨てて、根源であるセックスだけに純粋に没頭できるかを考えたのです。それができたら楽しくないですか?

 そう考えたときに、最初に思いつくのは、同窓会ですよね。つまり、共有しているものがすごく多い。年齢も、時代背景、そして同じものを食べて、同じ時間をかなり過ごしている。それに、お互いに見栄を張ったりしなくて済みますから。バリアがすごく低い。だから、同窓会は浮気の温床だといわれる。

 それ以上に、最初のセックスに至るためのセレモニーがもっと少なくて済むのは、血縁のある昔の幼なじみではないかと思います。

ーー賢治は起業前に勤めていた会社で、取引先の社長の娘と結婚し、海外赴任も内定しているようなエリートでした。にもかかわらず不倫で家庭を壊し、職も失うという、ある意味でどうしようもなく、先の行き詰まった生き方をしている男のように思えます。

『火口のふたり』


年末年始にぜひ

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