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ビジネスマンを惑わす、自己啓発のウソ・ホント 第1回

「ポジティブ思考が成功を導く」はウソ! 重要なのは「潜在的思考=フレーム」を可視化すること

文=鈴木領一/コンサルタント

「ポジティブ思考が成功を導く」はウソ!  重要なのは「潜在的思考=フレーム」を可視化することの画像1「Thinkstock」より
 出版不況の最中、堅調な売り上げを続けているのがビジネスマンなどに向けた「自己啓発本」というジャンル。「成功するための秘訣」が収められた本を繰り返し読んでは、いつまでたっても成功しない自分に不甲斐なさを感じている人は少なくないはずだ。変わらない自分のどこに問題があるのか?

 そこで、自己啓発理論を研究しつくしたビジネス・プロデューサーの鈴木領一氏が「自己啓発」「能力開発」の本質をレクチャー。話題の最新刊『100の結果を引き寄せる1%アクション』のエッセンスを交えながら、「自分が求める成果を出すために、本当にやるべきこと」をお伝えする――。

 巷に溢れるいわゆる自己啓発本の多くが「ポジティブに考えれば成功する」と書かれています? それって本当でしょうか?
 
 結論を先に言わせていただくと、NOです。

 私はかつて120年の歴史があるアメリカの「SUCCESS」(サクセスマガジン)と共同で成功者を研究し、その思考方法をまとめあげた教育プログラムを開発しました。

 その際に、3万人におよぶ取材データを検証した結果、ポジティブ思考だから成功する、という単純な図式ではないことを発見しました。失敗した人の中にもポジティブ思考の持ち主が多くいたのです。

 私自身、ポジティブ思考が成功の近道だと思っていましたので、その結果にはとても驚きました。しかし、さらに研究を続けることで、さらに思考の深層にある“何か”が結果を左右していることに気づきました。

 次の事例から解説しましょう。

 急成長していた会社が失速しはじめ、その会社の経営者が私のもとにコーチングの相談に来られました。この方は非常にポジティブで前向きな性格の方で、情熱溢れる話し方で社員を鼓舞していました。しかし、突然業績が落ち始めてストレスを抱えるようになり、自分も何が原因か分からない、ということでした。

 私はこの経営者の深層にある「フレーム」(潜在的で無自覚な思考システム)を探る質問をしてみると、意外な事実が分かったのです。実はこの経営者、今のビジネスが大嫌いだったのです。

 会社の創業時にはとりあえず食べるために何でもやったそうですが、その中の一つが偶然当たり、あれよあれよと成長していきました。勢いに乗って社員も増やし、東京都内に本社を構えるほど順調に成功していました。社長の持ち前の明るい性格も手伝って、社内にも勢いが満ちていました。

 しかし、競合が増え、価格競争が激しくなり、業績が落ち始めると、途端に社長はストレスを抱え始め、毎日出社することさえ辛くなっていたのです。なぜなら、本来自分がやりたかったことではなく、食うためにしかたなく始めたビジネスだったからです。

 当の本人さえ、私に出会うまでその事実に気づいていませんでした。いや、正確に言うと、自分で自分をごまかしていたと言ってもいいでしょう。仕事が順調だったため、「これが自分の天職なんだ」と言い聞かせていたのです。そして見えないストレスをずっと抱えていました。

 ポジティブ思考云々以前に、自分の潜在的思考=「フレーム」が最後には自分の行動や思考を決定付けるのです。ポジティブ思考とフレームがぶつかる時、フレームが優位になります。だから、ポジティブ思考をしていても、うまくいかないことが起こるわけです。

自分の中の「フレーム」を自覚できるのか?

 ここで「フレーム」について詳しく解説しましょう。「フレーム」とは簡単にいえば潜在意識下にある普段は自覚できない思考習慣のことです。もともとは認知科学や人工知能研究で使用されている用語で、マサチューセッツ工科大学人工知能研究所創設者マービン・ミンスキー博士が提唱したものです。「フレーム」をメンタルコントロールに使えるように私はメソッド化しました。

 例えば、自動車の運転でも「フレーム」が働いています。自動車教習所で運転を習った時を思い出してください。初心者の時には、ハンドルやアクセル、ブレーキの操作を考えながらやらなければならかったはずです。しかし、慣れてくると何も考えずに運転することができるようになります。自動車運転の「フレーム」が潜在意識に固定化され、自分の代わりに「フレーム」が運転をコントロールしているからです。

 なんだ潜在意識の話か、と持ったかもしれませんが、「フレーム」はそんな単純なものではありません。あくまでも自動車の例で分かりやすく説明しましたが、あなたの人生を左右する「フレーム」は決して気づかれることなく、まるで存在しないかのように振る舞うため、特別な方法を用いない限り、あなたが「フレーム」を自覚することは不可能です。

「フレーム」は無数にあります。社内会議で司会者に指名されないように“メモをとるフリ”をするのは「私は自分の考えに自信がない」というフレームが動いているからです。スタバでコーヒーを注文し、席へ運び、飲み終わったらゴミ箱に捨てるのは、スタバが刷り込んだセルフサービスという目に見えないフレームがあなたを動かしているのです。それらは決してあなたに「何かおかしい」と気づかれることなく、あなたの思考や行動を背後でコントロールしているのが「フレーム」なのです。

 表面的なポジティブ思考ではフレームをコントロールすることは難しく、潜在的にあなたをコントロールしているフレームが常に全ての思考より優位に動き、しかもあなた自身に嘘をつかせます。前出の経営者の場合、「本当はこのビジネスが嫌い」というフレームがあることに本人も気づかず、意図的にポジティブ思考をしながらもストレスまみれになっていました。

 ではどうすればフレームを発見することができるのでしょうか。最も簡単な方法が、一枚の紙とペンを使うことです。

「フレーム」を可視化する方法

「フレーム」は潜在意識の中の最も小さな思考セットです。そして必ず感情とリンクしています。過去の何らかの体験が「フレーム」を作っており、その時抱いた感情が「フレーム」を固定化しています。例えば、好きな異性と目を合わすことができないのは、過去の体験によって作られた思考と感情が組み合わさり「異性から目をそらすフレーム」になっているのです。

 感情をキーに思考を引っ張り出せば「フレーム」を可視化できます。最近感情的になったことを思い出してください。嬉しい、悲しい、悔しい、許せない、なんでもかまいません、そのような感情が出てきた時、どんなことを考えたでしょうか。それを紙に思いつくだけ正直に書いてみるのです。その中でもっとも感情的に反応する文章に注目してください。

 前出の経営者の場合、「よしがんばるぞ」と言った後に“嫌な気持ち”になっていました。その時心の中で思ったことを正直に紙に書いてもらったところ、「この仕事は好きじゃない」と書いたのです。この文字を書くのにも彼は時間がかかり苦痛を感じていました。なぜならずっと自分に嘘をつき続けた「フレーム」が本当のことを書かせることに抵抗したからです。

 彼はかつて経験した貧乏への恐怖から「嫌いな仕事でも金のためにやるべき」というフレームを知らず知らずのうちに作り、それが彼の思考と行動を暗黙のうちにコントロールしていました。しかし、このフレームに気づいたことにより、彼は本来やりたかったビジネスに目覚め、会社を売却し、その資金でやりたかったことを始めて、今ではイキイキと仕事をしています。

 フレームに気づかない限り、いかにポジティブ思考をしてもあなたの望む結果を得ることはできません。

 そのために、まず自分一人の時間を確保し、素直な自分と向き合い、紙に正直な思いを書いてみてください。それが、あなたの人生を変える第一歩になるかもしれないのです。(つづく)

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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