最近ではパリス・ヒルトン、ラッセル・ブランド、BEASTというK-POPアイドル、古くはローリング・ストーンズのミック・ジャガー、ビートルズのポール・マッカートニー、ディエゴ・マラドーナ、マイク・タイソンなどの有名人が、日本への入国を拒否されている。紅白歌合戦に7年連続で出場するほどの人気歌手であった桂銀淑は、薬物使用により日本での滞在が認められなくなり、韓国に帰国させられた。
これらはいずれも、入管法による措置である。また、偽造旅券で入国しようとした金正男氏とみられる人物の強制送還や尖閣諸島に不法上陸した外国人活動家の逮捕といった政治的な場面でも、入管法がしばしば適用されている。
●日本における入国管理行政の実態~様々な「共生者」
入管法は、日本にとって好ましからざる外国人の入国及び滞在を拒否し、日本にとって有益な外国人のみを受け入れる機能を有する。同法は、日本の治安の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定など、出入国管理秩序を維持するために極めて重要かつ強力な法律である。
だが、日本の外国人問題に対する対応は不十分である。入国管理局の人員及び予算が不足していることや、日本は単一民族に近いために、「外国人」という存在に対する関心が国民の間で高くないことが影響しているだろう。
そのような間隙を突き、急増しているのが、外国人の偽装滞在である。形式的には在留資格(ビザ)を有しているものの、偽造書類を提出するなどの不法な手段で在留資格を詐取したり、許可された活動以外の就労活動を不法に行っている外国人が、かなりの数存在している。
外国人の偽装滞在が急増する中で、それを助長させる日本人や日本の会社が後を絶たない。その手口は、外国人に在留資格を取得させるために、日本人が偽装結婚や偽装認知(自分の子でないのに虚偽の認知をする)に協力するというのが典型である。最近では、偽装滞在をほう助するための手続きを行った行政書士などの法律専門家が逮捕される事例も複数発生している。
偽装結婚についていえば、入国管理局による審査を欺くために、住民登録上の住所を同一にし、かつ、一応一つ屋根の下に住むことによって、あたかも、同居して夫婦としての共同生活を送っているかのような外観を作り出しつつ、内実は、それぞれの部屋に鍵をかけて完全に断絶している例や、外国人「妻」が1回だけ偽装「夫」との性交渉に応じ、偽装結婚の協力者(共犯者)としての「夫」をつなぎとめ、夫婦らしい外観をことさら装う例など、手口がより巧妙化している。そのため、入国管理局が実態調査をしても、偽装結婚であることを容易には見抜けなくなりつつある。
さらに、近時の傾向としては、入国管理局が平成17年以降、フィリピン人ダンサーなど(実際には、パブなどの飲食店において、許可されていないホステス業務に従事する者が多かった)に対する「興行」の在留資格の審査を厳格化し、ほとんど許可が出なくなったことに伴い、それに代わる入国手段として、偽装結婚による「日本人の配偶者等」の在留資格の詐取事案が増加している。
また、就労可能な在留資格を詐取するのに必要な虚偽の在職証明書や源泉徴収票を交付したり、偽装滞在者であることを知りながら違法に雇用したりしている日本企業も多く存在する。
昨年10月、調理師としての「技能」の在留資格で入国した中国人を単純労働のホール係として働かせたとして、餃子店をチェーン展開する「珉珉(みんみん)本店」会長らが入管法違反で逮捕された事件は記憶に新しい。最近は、少子化で学生確保に悩む専門学校や大学までもが、偽装滞在者の協力者(共生者)となる事案が出てきている。勉学ではなく就労が目的の外国人留学生を生徒として大量に受け入れ、適正な在籍管理を行わないばかりか、偽装留学生の在留資格の更新手続きなどに必要な虚偽の出席証明書や成績証明書を作成するのである。
より悪質な場合には、出席率などの改変幅に応じ、偽装留学生から見返りとして金銭を徴収する例もみられる。年々、偽装滞在の手段は巧妙化し、その協力者の裾野は拡大する一方である。