藤平 理由は2つあります。まず、一番手っ取り早いのは番組にコード付けして、それを読み取る方法があるのですが、電波法の規制により、これができないことが第一です。映像が劣化する危険性があるからと、番組内へのエンコードが禁じられています。
次は視聴率調査会社ビデオリサーチの背景を知る必要があります。同社の創立以前、大手広告代理店・電通やテレビ局は独自に視聴率調査を行っていました。しかし、それでは信用性に欠けるということから、第三者機関による視聴率調査を行おうということになり、電通の吉田秀雄社長(当時)が主導的役割を果たし、民放18社に加え電通と東京芝浦電氣(現東芝)が出資してビデオリサーチを設立したわけです。ところが独立した第三者の調査機関であったはずなのですが、現在、ビデオリサーチは大株主の電通が支配的な経営を行うようになっているため、その意向を無視できないのです。
忘れてならないのは、視聴率というのは、人々の番組の嗜好を測定する指標であると同時に、テレビ局や広告代理店にとってはスポンサーのCM料金、すなわちテレビ局の売り上げにかかわる重要な広告効果の指標の1つでもあるわけです。そういう視聴率調査に、CMは早送りで視る人が多い録画で視る人の数を加味しても、彼らにとっては意味のない調査になるのでしょうね。「録画で視る人を視聴率調査する必要がない」という電通の意向が、このシステムの導入を大きく阻害しているのだと思います。一刻も早く、真のテレビの視られ方の尺度が確立されることを望みますね。そうでなければ、ビデオリサーチは番組の視聴を調べるのではなく、CMの視聴率を測定する道を選ぶことです。実情に合わないテレビの視られ方を調べて、「これがこの番組の視聴率です」とは言えません。
(構成=編集部)