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医学部新設に猛反対する医師会に、医療現場から怒りの声…医師会、大学、自民党の攻防

文=一条しげる
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医学部新設に猛反対する医師会に、医療現場から怒りの声…医師会、大学、自民党の攻防の画像1「Thinkstock」より
 今、「医学部新設」をめぐって熱いバトルが繰り広げられているのをご存じだろうか。

 きっかけは今年2月、自民党の東北選出議員や有志30人によってつくられた「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」が、大学の医学部新設を目指すことを決議したことだった。

 東北が深刻な医師不足に悩んでいるのは今に始まったことではないが、震災によって、それにさらに拍車がかかっているのは間違いない。だから、医学部をつくって被災地支援をしようじゃないか–。

 特段問題なさそうな主張だが、これに「待った」をかけたのが「日本医師会」である。「医師は足りないどころか余っている。ワケのわからない医学部をつくったら、医師の質が下がる」と猛反対しているのだ。この主張に対して、某大学病院の勤務医は怒りを隠さない。

「医師会というと、なんだか医師全員の団体のように思われがちですが、実はほぼ開業医の業界団体なのです。土日休診で、地域のお年寄り相手にガッツリ稼ぐという殿様商売をしている連中の発言力があるので、商売敵を増やしたくない。そんなに余っているというなら、救急医療の現場に行ってみろと言いたい。医学部新設の話が出るのは遅すぎた」

 これまで日本の医療業界では、長く「医学部新設」はタブーだった。1979年の琉球大学で新設されたのが最後で、30年以上つくられていない。

 この背景には、日本医師会が自民党の最大の「票田」だったということがある。要は選挙をちらつかせて圧力をかけていたのだ。ではなぜ、「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」などというものが、自民党内でできたのか?

「あの議連は昨年秋、自民の政権復帰が見えてきたタイミングにつくられた。日本医師会は09年に自民を切って、民主の支持に回っていたので、その意趣返しでつくられたと囁かれた。次の選挙で日本医師会は自民支持に戻ると表明しているが、医学部新設というカードをわざとちらつかせ、二度と“裏切り”がないよう牽制しているのではないか」(自民党関係者)

 たしかに、自民党議連の動きは、医師会には脅威である。実は昨年から私大の雄・早稲田大学をはじめ、同志社大学、国際医療福祉大学などが「医学部新設」に色気をみせている。東北でひとつ認めてしまったら、ダムが決壊するように、これらの大学も動き出す可能性は高い。

怪文書も飛び交う、激しい攻防

 しかし、そこは“最強の圧力団体”ともいわれる日本医師会。水面下でかなり激しい反撃に出ている。推進派を攻撃するような「紙爆弾」が、政治家やマスコミの間に飛び交っているのだ。

 医師不足を主張する専門家などを“国賊”と呼んで激しく攻撃しているほか、推進している大学が水面下でロビー活動をしているというような告発や、今回とはあまり関係ない不正を追及しているようなものもあった。たとえば、医学部新設を表明した同志社大学などの場合、現在放送中のNKH大河ドラマ『八重の桜』を引き合いに出されて攻撃されている。

「新島八重は晩年、日清戦争などで従軍看護婦として活躍したことがあるため、同志社も放映に合わせてホームページで八重を“日本のナイチンゲール”などとうたっている。反対派は、『同志社は八重を利用して“同志社=医療”というイメージを拡散させて医学部新設に向けて動き出している』と批判しているのです。そもそも八重は会津出身ですから、東北にも縁が深い。当たらずも遠からずという話です」(新聞記者)

 自民党、日本医師会、そして有名大学……さまざまな思惑が複雑にからみ合う“仁義なき情報戦”。ただ、ひとつ気にかかるのは、どこも頭から「患者」という発想がごっそりと抜けている。

 新設しようがしまいが、日本の医療の先行きは暗そうだ。
(文=一条しげる)

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