「在特会を見ればイルベが見える」日韓双方が困惑する極右団体の類似点とは?
例えば、ニュースサイト・時事INでは「在特会を見ればイルベが見える」という記事を掲載。「まるで双子のよう(中略)日本と韓国のネット右翼勢力が、シンクロしながら動きだしたようだ」としながら“理念的少数者”を装い、ネットユーザーたちの“被害者意識”を触発する“小英雄的”な行動が目立つと指摘している。
さらに、ハンギョレ21では『ネットと愛国』の著者・安田浩一氏の見解を援用。在特会とイルベの共通点を、“承認欲求”“社会に認められたい願望”にあるとの見解を示した。
そのほかの論調などを含め総合的に判断するならば、ネガティブな共通点を挙げ社会問題としてとらえるメディアが多く、なかでも暴力的な言葉遣いに対しては批難が集中しているようだ。
普段は意見対立が多い日韓メディアだが、“ネット右翼”叩きに関して、歩調が合っているのは興味深い。“互いに叩きあう既成メディアとネット右翼”という構造にも、どこか共通点が感じられる。
一方、韓国現代社会の思想動向に詳しいジャーナリストの林氏(仮名)は、こう指摘する。
「1997年のIMF危機以降、韓国では非正規雇用が増え、ITバブルが終わった03年頃からは、格差が本格的に拡大しています。同時にグローバル化に伴い、中国やネパール、バングラデシュなどから労働者が流入を続けている。中産階級の崩壊が始まっており、外国人労働者と職を争わなくてはならなくなった人々の不満のはけ口として、排他的な主張が生まれてきたのです。もちろんそれは、メディアにも注目されない、ごく少数の意見にすぎませんでしたが……。イルベは、そのような背景の中で影響力を伸ばしてきました」
日本では、在特会出現の背景に格差の拡大があると指摘する識者がいるが、韓国でもイルベの出現と格差拡大は期を同じくしているようだ。
「イルベユーザーには大学生や若者も多い。食うに困った人たちばかりではありません。ただ、排他的な言説が影響力を持つ社会背景には注意を払うべきです。イルベが格差に不満を持ち始めた人々と距離を縮めていく可能性は、十分に考えられます」(林氏)
これまで、在特会やイルベという現象は、“マイナー現象”もしくは“周縁の現象”として扱われてきた。一部の人々が、ネットで培った情報を頼りに不満を吐き出しているだけだという認識だ。
しかし、問題は意外と根深いのかもしれない。グローバル化が加速する昨今、外国人労働力の流入増加や、正規雇用と非正規雇用の格差拡大は、日韓両国で同じ動きを見せている。“限られたパイ”をめぐる人々の摩擦が、両国で同時に増え始めているのだ。