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アフリカ熱視線疑問視 カントリーリスクは置き去りだ

急成長遂げるアフリカ、大きく進出遅れる日本の勝算は? 進出加速させる日本企業の挑戦と課題

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まだ手付かずの金脈を探す。(「Thinkstock」より)
 6月1日から3日まで、横浜市で「第5回アフリカ開発会議(TICAD5)が開かれ、アフリカへの関心が高まっている。

 TICADで安倍晋三首相は「今後5年間で、官民合わせて最大3兆2000億円をアフリカ支援に投じる」と宣言した。高度成長を続け、世界経済の最後のフロンティアとされるアフリカ向けの投資・貿易で、日本は中国や欧州に大きく立ち遅れている。

 巻き返しを図るのも結構。熱い視線を投げかけるのも結構だが、またしても、カントリーリスクが置き去りにされる懸念が強い。日本人のビジネス戦士が、再度どこかで亡くならない限り、カントリーリスクは死語となる。

「今、アフリカに必要なのは民間投資」。安倍首相は中国への対抗心をあらわにする。3兆2000億円の支援のうち、政府開発援助(ODA)は1兆4000億円。残りは日本貿易保険などを使った民間資金だ。

 熱視線を冷ますようで申し訳ないが、中国は2012年に「向こう3年間で200億ドル(2兆円)の借款をアフリカに供与する」を骨子とした支援策を公表済みだ。国の支援だけでは中国に負けるが、民間資金を加えてなんとか帳尻を合わせ、“中国並み”と言っているわけだ。

『資源やサービス産業を牽引役に、世界のトップクラスの成長率で発展に突き進む。増え続ける中間層や優秀な人材を狙って、世界中の企業が集まり始めている。「貧国」や「汚職」、「民族対立」といった暗いイメージは過去のもの』

『若さと希望に溢れた、人類最後の「10億円フロンティア市場」として胎動を始めた。中国や欧州勢に比べて出遅れ気味だった日本企業が、これからどう巻き返すのか。過酷な条件下での、弱肉強食のいす取りゲームに残された時間は少ない』

「日経ビジネス」(2013年5月27日号)のアフリカ特集のリード(前文)である。「日経ビジネス」はアフリカ礼讃だが、現実はもっと厳しい。

 中国の背中が遠いのだ。日本の12年のアフリカとの貿易総額は、中国の5分の1にすぎない。11年末の直接投資残高は、中国のおよそ半分だ。日本からの進出企業は500社、中国は2000社以上。日本勢は、ここでも4分の1だ。不戦敗の国・地域も多い。

 では、日本はどうすればいいのか。アフリカ54カ国に総花的な投資をしても絶対的に金が足りない。政府は「戦略インフラ整備計画」の対象をケニア、モザンビークなど10カ国に絞り込んだ。政府援助も「選択と集中」なのである。

 経団連は南アフリカ共和国、ケニア、モザンビークにアンゴラ、ナイジェリアなど14カ国を「戦略的重点地域」と位置付けた。石油・天然ガス、鉱物資源などが豊富で、日本企業が進出している国だ。とはいえ、こうした国々に対しては中国も韓国も国を挙げて取り組んでいる。英仏はアフリカを植民地にしてきた旧宗主国だ。中国の独走ぶりに英仏は危機感を募らせている。欧州諸国は中国に比べて周回遅れ。「日本は、10年は遅い」ともいわれている。

●中国がアフリカ最大の貿易国 奮闘する日本企業はどこ?

 JFE商事の子会社、川商フーズは「ゲイシャ」ブランドのサバ缶をガーナやナイジェリアで売っている。サバのトマトソース煮だ。ガーナやナイジェリアで6~7割のシェアを誇る。中国は、缶のデザインもそっくりの偽物「ゲイシャ」を売り込んでいる。中国のアフリカ侵攻の方法は、正面・裏の両方からだ。例を挙げれば、軍事力をバックに攻め込むケースもある。

 アフリカで最も若い国、南スーダンの首都、ジュバに向かう飛行機は中国人であふれ返る。カボンの目抜き通りには中国の援助で建てられたビルが林立する。中国はアフリカ全体の最大の貿易相手国だ。

 アフリカの総人口は現在、54カ国で10億人だが、30年までにインドや中国を抜き、そのあと30年で2倍の20億人に達する(50年に20億人という見方もある)。GNP(国内総生産)の17年の成長率予測では、世界上位20カ国のうち10カ国をアフリカが占める。成長は底なしだ。

 こんな話を聞くと絶望的になったりするが、日本企業もがんばっている。

 三井物産は、モザンビーク沖で天然ガス田開発を進めている。新日鐵住金は製鉄に使う原料炭の開発に乗り出した。モザンビークで日本の製鉄会社が原料炭の採掘権を得たのは初めてだ。

 ナイジェリアでは、カネカのつけ毛が人気だ。カネカが開発した合成繊維、カネロンが、つけ毛の素材に使われている。このつけ毛は多くの国で高いシェアを持つ。

 味の素はナイジェリアやコートジボワールに工場を持ち、「味の素」を10グラム程度に小分けして売っている。「味の素」はアフリカでも人気商品なのだ。

 日野自動車はケニアで中型トラックを生産し、6月に現地販売を始めた。三菱ふそうトラック・バスは、インド工場からトラックを年内にタンザニアに輸出する。ホンダはナイジェリアに続き、ケニアで二輪車の生産に乗り出す。新興国モデルを現地で組み立てる。

 アフリカ全土に暮らす中国人は、50万人とも100万人ともいわれている。習近平国家主席は、就任最初の外遊先としてロシアとアフリカを選んだ。タンザニアでは、3年間で2兆円という巨額のアフリカ支援策を明らかにした。

 一方、日本人はアフリカ54カ国に8100人(11年10月)しかいなかった。現在でも1万人を超えてはいないだろう。日本の首相がサハラ砂漠以南の国に行ったのは06年の小泉純一郎首相が最後である。アフリカの首脳を5年に1回、日本に呼びつけて「開発会議」を開くより、安倍首相がアフリカ諸国を歴訪する方がどれだけ有効か。安倍首相は、本当は「TICAD5」で何をやりたかったのだろう。投資協定なんか結んでもダメな地域である。

 アフリカは00年代に入り、年平均5.8%の経済成長を遂げるなど成長著しい。この地域の中心的な年齢層は20歳前後と、若い国々が多い。今後、勝負は5年で決まる。スピード感に欠ける日本政府や企業に、勝機はあるのだろうか。

 13年1月、日揮の社員がアルジェリアで犠牲になった。アフリカの政治体制やイスラム過激派によるテロという構図は変わらない。これを、常に頭に入れておかなければならない。安倍首相を筆頭に、日本全体が「暗黒大陸」アフリカに前のめりになっているのが気がかりである。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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