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島田紳助氏「復帰まだキツイ…」引退突きつけた吉本社長が語る、吉本の裏歴史と真実

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「『笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語』(幻冬舎/常松裕明)より
 現在、芸能関係者の間で一冊の新刊本が話題となっている。吉本興業・大崎洋社長の『笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語』(幻冬舎/常松裕明)だ。

 大崎社長は関西大学社会学部卒業後、吉本興業に入社。1980年に上司であった“ミスター吉本”木村政雄氏と共に東京支社に異動。80年代の漫才ブームを支え、その後、ダウンタウンと出会い一時代をつくる。新人タレント養成所である吉本総合芸能学院(NSC)、心斎橋筋2丁目劇場、吉本新喜劇再生プロジェクトなど数々のプロジェクトを手がけてきたが、社内では傍流で左遷と出世を行ったり来たり。役員就任後も、世間を騒がせた創業者一族vs.現経営陣の吉本興業お家騒動の登場人物の一人でもある。

●吉本興業の社長が語る数々の事件の裏側

 本書には大崎社長が吉本で経験したさまざまなエピソードが満載で、あの『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)打ち切り事件の裏側についても書かれている。プロ野球中継のために、『ごっつええ感じ』の放映を延期されたダウンタウンが激怒し、番組打ち切りとなったこの一件。当時は、「天狗」になったダウンタウンの横暴のように報道されたが、実際には、「この枠では俺らの笑いは成立せえへん」と言い続けていたダウンタウンの笑いに対するこだわりと、フジテレビ側の間に募っていた、お互いの不信感が遠因だったという。

 また、島田紳助氏の芸能界引退をめぐる舞台裏も明かされている。反社会的勢力との交流という事実に「アウト」を突きつけたのも大崎社長だ。芸能界引退後の紳助氏とメールや電話で連絡を取り合っていたという大崎社長とのやり取りからは、現在の紳助氏の複雑な心境を垣間見ることもできる。紳助氏は「一時は自殺しかねないほど落ち込んでいた」そうで、昨年8月に大崎社長が直接会って、復帰の意思があるかどうかを聞いた際には、「正直、まだキツいんや」「5年後か10年後、CSの番組かなんかでトークとかをできればええかな」と、独特の言い回しで答えたという。

 ほかに、フジテレビ退社後に吉本興業の常務・東京本社代表に就任していた横澤彪氏の意外な素顔も興味深い。横澤氏といえば、『森田一義アワー 笑っていいとも!』『オレたちひょうきん族』を生み出したフジテレビの名物プロデューサーで、テレビでは温厚で好々爺のイメージだったが、実はキレやすい人物だったという。大崎社長に関する怪文書が飛び交っていた時期には、「テレビ局の誰々と組んで悪さをして金儲けをしているっていうじゃないか。怪文書も出回っているようだし、こんなことじゃ困るんだよ!」と激しく感情を爆発させ、大崎社長が取締役に選任される株主総会の前日にも「てめえなんかダメだ!俺は絶対許さねえ!」と激しく罵倒したという。

 ところが翌日の株主総会では、「いや~、大崎ちゃん、おめでとう」と手のひらを返すような笑顔で、これには大崎社長も戸惑うばかりだったという。

 横澤氏はどの会社にもいる裏表の激しい人物だったようだが、いずれにせよ、個性豊かな人間に囲まれた、「まるで吉本新喜劇のようなドタバタの35年間」はまさに波瀾万丈だ。

 もうひとつこの本で気になるのは、自叙伝の体裁をとりながら、著者名が「常松裕明」と別名であることだ。実は常松氏は、元は泣く子も黙るスキャンダル月刊誌「噂の眞相」の芸能担当記者。いったいなぜ、この本を執筆することになったのか。常松氏に聞いた。

 「もともと吉本興業は『噂の眞相』時代からの取材対象で、木村政雄さんが吉本を辞めた時にも直撃取材をしていますし、大崎社長にも当時から何度も話を聞きにいっていたんです。確か、最初はダウンタウンの降板騒動で、そのときは3時間も取材しておきながら、記事に書いたのは『大崎氏は疑惑のすべてを否定した』という1行のみだった(苦笑)。本にも出てきますが、まさに『大崎バッシング』をしていた記者の一人だったんです。

 その後、『噂の眞相』が休刊してからも取材は続けていましたが、たまたま『日刊ゲンダイ』の依頼で『吉本の笑いと人々』という大崎氏のインタビュー連載をやることになり、これが本書のベースになっています。書籍化に当たっては、追加取材を重ねた上で自伝形式に書き直すことにしたんですが、その間にも紳助の事件が起きるなどいろいろあって、結局、形になるまで3年もかかってしまいました。

 そういう経緯だったので、当初は名前を出さないゴースト執筆の予定でしたが、大崎社長から『せっかく書いたんだから、自分の名前で出しなよ』という申し出があって今回の体裁になりました」

 本書は、あの“怪芸人”中田カウスも登場するお家騒動など、吉本のダークな側面にも迫っている。ただし、沖縄国際映画祭など社長就任後の仕事については、簡単に触れているだけで、「噂の眞相」に迫り切れていないようにも思えるが。

 「今回の本は大崎氏が社長に就任するまでの物語ということで、それ以降の話は詳しく書いていません。沖縄に移住した岡留安則・噂の眞相元編集長には『ツッコミが甘い』と言われるかもしれませんけど(苦笑)、これはこれで岡留さんがよく言っていた『ヒューマン・インタレスト』のひとつ。いずれ機会があれば、別の形で書いてみたいですね」
(文=松井克明/CFP)