同社の13年3月期連結決算では、弁当宅配事業の売上高は前期比48.1%増の388億5000万円。売上構成比は24.6%であり、主力の国内外食事業(居酒屋事業)48.1%に次ぐ事業規模となっている。営業拠点数は全国431カ所に達する(13年9月末時点では522カ所)。
また、同社が昨年5月の13年3月期決算発表会で示した中期経営計画では、弁当宅配事業の売上高を17年度に1100億円(13年3月期実績の約3倍)に引き上げ、不振が目立ってきた居酒屋事業に代わる主力事業(弁当宅配の売上構成40.7%、国内外食の売上構成31.5%)に育てる意欲的な青写真を描いていた。
この中計は創業者の渡邉美樹氏(昨年6月の参議院議員選挙立候補に際し、ワタミの全役職を辞任)が「ワタミ再成長の方向性を示すため自ら策定した」(渡邉氏側近)とされる自慢の経営計画だった。
ところが、昨年11月7日に発表した14年3月期中間連結決算(13年4-9月)業績では、売上高、営業利益、経常利益、最終利益のいずれも計画未達となり、通期業績見込みを下方修正する事態に追い込まれた。その結果、弁当宅配事業も売上高は当初見込みの544億円から456億円(16.2%減)へ、営業利益は同38.1億円から26.8億円(29.8%減)へ引き下げなければならなかった。
08年の事業開始以来右肩上がりで伸びてきた1日当たり配食数も、13年3月期実績の28.1万食と実質横ばいの28.6万食(14年3月期中間実績)にとどまったため、通期見込みは当初の41万食から35万食へ引き下げとなった。
証券関係者は「配食数が実質横ばいに対して、営業拠点数が431カ所から522カ所へと21%も拡大している。拠点拡大に注力したとしても、やっぱり異常。既存拠点の配食数が前年度割れしているとしか思えない」と指摘している。
一昨年から新規参入が相次ぐなど需要が顕在化し、本格的成長に向けて活気づく市場環境での事業伸び悩み。ワタミに一体何が起こっているのか。
●シニア市場の変化を先読みしたワタミの先見性
ワタミが長崎県の「タクショク」を買収し弁当宅配市場に参入したのは08年。当時は好感度がまだ高かったワタミのブランドイメージとテレビCM展開などの相乗効果により、一気に認知度を高めていった。
高齢者向け弁当宅配事業はもともと、自治体に委託されたNPOや地場弁当事業者が手掛ける社会福祉事業の1つだった。「そこへ居酒屋チェーンの経営ノウハウを持ち込み、営利事業としての弁当宅配を確立したのがワタミだった」(外食業界関係者)といわれる。前出の証券関係者は「その意味で、高齢者向け弁当宅配から社会福祉の枠を取り払い、成長産業に転換したワタミの先見性と功績は大きい」と評価する。
この「ワタミの先見性」の背後にあるのが「シニア市場の変化」だ。