「ワタミの弁当宅配は週コース制で、毎週月曜から金曜まで日替わりで配達される。そして同社は『トータルで数百種類の献立を用意しているので飽きがこない』と宣伝している。ところが実際に注文してみると毎日似たような特徴のない弁当が配達されてくるため、1コースか2コース利用すると、やめてしまう利用者が多い。つまり、リピーターではなく新規開拓で成長してきたと思われるが、それは今になってワタミが慌ててかつての利用者に訪問営業攻勢をかけていることからもうかがえる。後発組が続々と誕生、利用者に選択肢が増えた結果、メニュー的な特徴のないワタミの弁当に先発の優位性がなくなったのではないか」
●ワタミ、労働環境の問題点も顕在化
ふたつ目は、弁当宅配事業で見え隠れするワタミの企業体質だ。
例えば、ここにきて偽装請負の疑いが浮上している。ワタミの弁当は「まごころスタッフ」と呼ばれる配達員が配達しているが、この配達員はワタミの社員やパートではなく、ワタミと業務委託契約を結んだ個人事業主。このため、配達員は自家用車で、ガソリン代も自己負担で弁当配達をしている。
ところが、「週刊文春」(文藝春秋/13年7月9日号)が「ワタミの宅食に偽装請負の疑いがあることがわかった」と報道し、話題になった。この中で同誌は「一部のまごころスタッフには『リーダー手数料』の名目で1-3万円の手当が支払われていた。こうしたスタッフは、業務委託契約にない仕事をしており、まごころスタッフが従業員に代わって営業所の電話を受けるなどの業務もあった」と報じている。さらに、まごころスタッフの業務自体についても、12年2月24日付ニュースサイト「ロケットニュース24」の記事は、「道路運送法違反の疑い」も報じている。道路運送法第78条は、法の除外規定を除き、自家用車での有償運送を禁止しているからだ。
前出の専門家は「こうした疑惑に加え、スタッフの待遇の低さが配達サービスの品質劣化要因にもなっていると」と指摘する。
「スタッフの業務委託契約は完全出来高制。ワタミの募集広告では『月20日間、1日20軒程度で月収7万円』となっている。保険、税金など自家用車の維持費とガソリン代負担を考えると、かなりの低賃金といえる。この仕事1本で生計を立てられるわけがないので、主婦が募集対象になっている。ところがその主婦にとっても魅力のあるパート仕事とは思えない。結局は募集難→配達要員不足→配達サービス品質低下の悪循環を起こし、これが固定客をつかめない一因にもなっている」(前出の専門家)
弁当宅配市場の活況は、図らずも「ワタミの宅食ビジネスモデル」の弱点を露呈する結果になった。果たして高齢者向け弁当宅配市場への民間参入のパイオニア的存在であるワタミは、現在の逆境を乗り越え、同事業を同社にとって主力事業に成長させることができるのか。今後の動向が気になるところである。
(文=福井晋/フリーライター)