規制委は7月16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)について「新規制基準に適合している」とする審査書案を定例会で了承した。川内原発1、2号機を含め、12原発19基が規制委の安全審査を受けている。川内原発は合格第1号となったが、規制委の田中俊一委員長は「新規制基準を満たしたから安全とは言えない」「世界一の安全基準という言葉は政治的な発言」と発言。規制委は基準に適合しているかどうかを審査するだけであり、再稼動するかどうかは政治の判断のため、規制委は一切関与しないとしている。
一方、安倍政権は今年4月、「規制委の基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し再稼動を進める」と明記した「エネルギー基本計画」を閣議決定している。規制委の審査に合格すれば自動的に再稼動できる仕組みをつくり、「政治判断はしない」といった発言を繰り返した。政府も規制委も原発再稼動を判断しない。では、誰が再稼動を判断するのか。審査合格後は電力会社が立地自治体に再稼動の意思を伝え、立地市町村長、次いで知事が再稼動に同意する手続きを取る。再稼動の最終判断は電力会社と立地自治体にゲタを預けられているのが実情である。
こうした動きに対し九電の瓜生道明社長は、定例記者会見で地元同意の進め方について「規制委が原発の安全性を、政府は原発の必要性を説明するべきだ」と語った。鹿児島県の伊藤祐一郎知事も定例記者会見で「エネルギー政策は最終的には国の責任であり、再稼動を地方公共団体に委ねるのは筋違い。明確な方向性を示してもらわないと、国の責任が明確にされない」と述べ、政府に再稼動の必要性を明記した文書を示すよう要請したことを明らかにした。
●最終責任不在のまま再稼働へ
九電は電力会社の中でも原発依存度が高かったため、原発停止が続く中で特に厳しい経営を強いられている。九電の2014年4~6月期の連結決算は最終損益が406億円の赤字で、財務状況は深刻だ。6月末時点の純資産(単体)は2985億円まで減り、自己資本比率は3月末の8.1%から7.2%まで下がった。連結ベースでも自己資本比率は3月末時点の10.5%から9.6%と、初めて1ケタ台に落ち込んだ。8月に日本政策投資銀行から1000億円の緊急融資を受け入れるため、自己資本比率は単体で2ポイント程度改善する見通しだが、赤字が膨らめば、さらなる経営悪化を迎えることとなる。
赤字から脱け出すには、原発の再稼動に期待するしかない。川内原発と玄海原発(佐賀県玄海町)が稼動できなければ、電気料金の再値上げ、再々値上げのコースをたどることになる。政府と規制委、地元首長、電力会社の中で、原発再稼動に最終責任を負うべきなのは誰なのか。その責任の所在があいまいなまま、川内原発は早ければ年内にも再稼動する見通しだ。
(文=編集部)