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井上久男『「内なる敵」に沈む朝日新聞』(9月24日)

朝日新聞、任天堂記事捏造・隠蔽の背景に好き嫌い人事の横行 公正な処分は下せるのか

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9月12日付朝日新聞
 従軍慰安婦報道検証後に誤報を認めながら謝罪しなかった対応を批判するジャーナリスト・池上彰氏の自紙連載コラム掲載を見合わせたことや、「吉田調書」報道を取り消したことなど不祥事が続く朝日新聞。会社の根幹を揺るがすような事態が続いている。

 こうした中で、またもや不祥事が起きた。大阪経済部の記者(現東京経済部記者)が捏造インタビュー記事を書いたのだ。任天堂の岩田聡社長をインタビューしていないのにもかかわらず、同社ホームページから勝手に岩田社長の発言を取り出して、あたかもインタビューしたように見せかけて記事を掲載したのである。そして、記事掲載後、任天堂から抗議を受けたものの、処理を内々に済ませて捏造を隠蔽していたのだ。

 その記事は、2012年6月8日付朝日経済面に掲載された『ソーシャルゲーム時代、どう対応? ゲーム大手4社に聞く』(データベース版タイトル)である。「聞く」とある以上、岩田社長にインタビューした記事であると読者は当然受け止めるので、これでは読者を騙していることになる。

 朝日は今年9月14日付経済面で「任天堂と読者の皆様におわびします」と題する謝罪文を掲載し、簡単な経緯を説明。その中では「今回新たに外部から指摘があり、事実関係を改めて調査した結果、紙面でおわびする必要があると判断しました」などと書かれているが、外部の指摘とは、「週刊文春」(文藝春秋)による確認取材なのである。

 関係者によると、「文春」は9月12日、この件に関しての事実確認を朝日広報部に対して行ったが、同部はなかなか回答をせず、突如13日夜中に発表することを決めたという。これは、メディア業界の暗黙のルールというか信義を大きく裏切る行為なのだ。一般的に、1社単独による独自ネタに関して事実確認の照会を受けた場合、その1社のみに回答するのが常識だ。朝日は「文春」のスクープを姑息にも潰すために、自ら発表する形態を取ったのである。自ら発表して「自首」したようなかたちにすれば、世間の批判も少しは抑えられるとでも思ったのであろうか。まさに、「この期に及んで姑息な手段」としかいいようがない。詳細は「文春」(9月25日号)に書かれている。

 実はこの件、筆者も薄々何が起きているのかをキャッチしていた。ある関係者から「古巣で、こんなことが起きているみたいですよ」と耳打ちされたのだ。朝日関係者に直接聞いたところ、否定はしなかった。13年10月に子会社の朝日新聞出版で「週刊朝日」編集長がセクハラにより懲戒解雇された際に、筆者は当サイトで組織風土を批判する記事を書いたが(『週刊朝日編集長の「セクハラ懲戒解雇」から透ける、朝日新聞の内部崩壊』)、その中で「発覚すれば編集担当の責任者の首が飛ぶかもしれない不祥事を隠している」と、オブラートに包んで任天堂とのトラブルのことを示唆した。その頃、筆者は朝日幹部に「任天堂に関する捏造インタビューを、どうも隠蔽しているらしい」とこっそり教えてあげたこともある。

●任天堂記事の捏造・隠蔽を生んだ組織的問題


 この捏造・隠蔽は、朝日の会社としての体質をあらゆる面で象徴している。捏造した記者は、総局から経済部に異動してまだわずかの月日しかたっていない「経済部1年生」。記事は、「ゲーム見本市」が開催されていたロサンゼルスからの発信になっている。まず、企業取材にまだ不慣れな記者を海外のイベント取材に出し、さらに慣れていない海外で社長にインタビューさせて記事を出稿させることは通常だったらありえない。指導役の先輩記者であるキャップがしっかり助言するなり、取材を支援したりしていたら防ぐことができるミスである。おそらく、インタビューのアポが入らず、キャップやデスクから出向を催促されて一人で苦しみながら焦ってホームページから発言を取ってきたのであろう。