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サントリーの大ばくち 巨額負債と綱渡り経営、「高すぎる」買収で背負った十字架

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サントリーホールディングス本社(「Wikipedia」より/663highland)
 サントリーホールディングス(HD)は昨年10月1日、ローソンから招聘した新浪剛史氏が社長に就任し、創業家以外が初めて経営トップになる新体制が始動した。

 同日、東京・台場のサントリーHD東京本社。大柄な体をグレーのスーツに包んだ新浪氏は、トレードマークの日焼けした顔から真っ白な歯をのぞかせ、第一声を放った。「やってみなはれ」。横浜生まれの新浪に関西弁は似合わないが、失敗を恐れず挑戦を促すこの言葉が大のお気に入りだ。新浪氏は「『やってみなはれ』のスピリットで、ともに挑戦していこう」と社員に呼び掛け、その姿は社員向けの動画サイトにアップされた。

 昨年8月に顧問へ就任してから、新浪氏は国内外の拠点を回り、問題点の洗い出しに着手した。必要なのは買収した米ウイスキー大手ビーム(現ビームサントリー)との相乗効果を最大限に引き出すための戦略だ。昨年10月1日、サントリー酒類から分離したビール事業の専業子会社サントリービールが発足。ビールと蒸留酒を手掛けていたサントリー酒類は、蒸留酒専業としてビームサントリーの傘下に入った。

 サントリーHDは昨年5月1日、米ビームの買収手続きを完了し、蒸留酒売り上げで世界10位から一気に第3位に浮上した。買収価格は総額160億ドル(約1兆6500億円)と、サントリーHDにとって過去最大の買収となった。同日付でビームの社名をビームサントリーに変更した。

 サントリーHDの佐治信忠社長(当時、現会長)は5月15日の記者会見で、「2020年にグループ売上高は4兆円を目指す。(上場子会社の)サントリー食品インターナショナルで2兆円、ビールやワイン、健康食品や関連事業で1兆円、新たに誕生したビームサントリーが1兆円企業に成長し、(トータルで)4兆円を実現したい」と述べた。ビームサントリーの売上高営業利益率は「当面20%を目指す」とし、「20年にはサントリーグループの酒類事業を牽引する大きな原動力になる」とビームサントリーに対する期待感を示した。ちなみに買収前のビームの利益率は24~25%だった。

 昨年5月にビームが加わったことで、サントリーHDの14年12月期の売上高は前年同期比19%増の2兆4400億円、営業利益は32%増の1670億円となる見通しで、キリンHD(14年12月期の売上高の見通し2兆2100億円)を上回る。サントリーHDは初めて飲料業界で売上高トップの座を手に入れた。

●「最後の、唯一のチャンス」


 ビームの買収には「高すぎる」との批判がつきまとった。ビームの13年12月期の売上高は2599億円。買収価格は売上高の6.3倍に相当するため、1兆6500億円の買収価格は割高だと指摘された。サントリーの酒類部門は国際化に立ち遅れていたため「ビームとの統合が最後の、唯一のチャンス」と佐治氏は位置付け、「(適正価格よりも)いくら出せれば買収できるのか。資金調達は可能かということが大きなポイントだった」と振り返った。そして、「借金が大きくなったことはリスクだが、世界のウイスキー市場はまたまだ伸びる」とも述べ、20~30年後を展望した場合、1兆6500億円の買収は高くないとの認識を示した。「投資は15年程度で回収することができる」と自信をのぞかせた。