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ヨドバシ福袋・転売屋、行列隔離や怒号で騒然?路上で業者が商品と金銭の授受

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
ヨドバシ福袋・転売屋、行列隔離や怒号で騒然?路上で業者が商品と金銭の授受の画像1
ヨドバシカメラ(本文内の「マルチメディア Akiba」店とは別の店舗です)

 今月1日の元日、朝8時から東京・秋葉原の家電量販店「ヨドバシカメラ マルチメディア Akiba」で販売された「夢のお年玉箱」。毎年恒例のイベントで、前日12月31日の昼間から100人近くにおよぶ待ち行列ができていた模様だが、転売屋とみられる人が数多くみられ怒号が飛び交ったり、行列の周囲には転売屋による横入りや「おかわり」防止目的とみられるガチャ(カプセルトイ)販売機がぎっしりと並べられ、店舗付近の路上では停車車両の前で転売屋の購入者と業者が商品と金銭の受け渡しを行う光景がみられるなど、物々しい光景が現れた。そうした面倒な事態を生んでも小売店が正月に福袋的な商品を販売する理由は何なのか。また、問題視されてから久しい転売屋撲滅の有効な対策というのはないのか。

 正月に福袋目当ての客が集まり小売店に行列ができる光景は正月の風物詩だ。ヨドバシカメラと同じ家電量販店としては、ヤマダデンキは1月2~5日、「感謝の初売り」と銘打ち福袋の販売のほか、ポイントバックキャンペーン「ヤマダの初夢ジャンボ」や最大3万円分の値引券を獲得できる「新春ヤマダロト」を展開。ビッグカメラは1日10時から「2025年新春福箱」を各店舗で販売するほか、1~5⽇に「5⽇間限りの初夢特別価格!」と銘打ちダイソンの空気清浄機・ファンヒーター「Dyson Pure Hot+Cool」を3万4800円で提供する安売りや、ビックポイント基本10%サービスに加えて最大3万ポイントをプレゼントする「お年⽟特典」を実施する。

 百貨店としては三越伊勢丹はオンラインストア上で「新春福袋」としての「レディース福袋」「ホーム&キッチン福袋」「美術福袋」などカテゴリ別・ブランド別に販売を行い、日本橋三越は「新春祭 2025」と銘打ち「初夢 福袋」(インターネット抽選販売)と「福袋」を販売。日本橋高島屋は3日10時から福袋の抽選販売を実施するほか、高島屋として「豪華客船MITSUI OCEAN FUJIで航いく“特別な体験”付き!クルーズ旅行 福袋」(405万円)、「祝!『佐渡金山』世界文化遺産登録 佐渡島プライベート旅行 福袋」(300万円)、「ウィーン国立歌劇場 2025来日公演 特別鑑賞ツアー 福袋」(26万4000円)などを抽選販売する。

 このほか、ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」は1日から「ドンキ初売り福袋」を展開。一例として「日立 フレンチドア冷蔵庫」と「Hisense 全自動洗濯機」のセットが18万8000円、「SHARP55インチテレビ」とレコーダーのセットが16万5000円となっている。

福袋の店頭販売を続ける理由

「ヨドバシカメラ マルチメディア Akiba」の「夢のお年玉箱」は「家電のお年玉箱」「パソコン・タブレットのお年玉箱」「カメラのお年玉箱」など計8カテゴリ用意され、各カテゴリに複数の福袋がラインナップされている。たとえば「家電のお年玉箱」には「調理家電の夢」(2万円)、「キッチン家電の夢」(1万円)、「ポータブル電源+ソーラーパネルの夢」(2万5000円)などがある。数量限定・一人1箱までと制限がかけられているが、発売日前日12月31日から行列ができ、SNS上では以下のような報告が相次ぐ事態となっていた。

<秋葉原ヨドバシが騒然としています…明日の初売り待機列で揉めごとがあったらしく(?)、怒号が飛び交っていて緊張感が走っている>

<(編集部追記:12月31日の)午前中からならんでいた新年徹夜待機列は200人ほどになり、ギラギラした外国人同士が揉めていて怒号が飛び交う欲望の場所になっている>

<転売グループの元締めに(ヨドバシからそれほど離れてない場所で堂々と)購入してきた商品を渡してお金を受け取ってる>

 ちなみにヨドバシカメラはECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」で「ヨドバシカメラ福袋2025」のオンライン予約販売(予約期間:11月25日~12月1日)もしていたが、なぜ毎年同じような事態が生じているにもかかわらず、警備員の配置や行列への対応など多大な労力をかけてまで元日の福袋の店頭販売を続けるのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「もともと福袋は、百貨店が1年のスタートの恒例行事としてお客さまに『昨年はお世話になりました』『今年もよろしくお願いいたします』という感謝を伝えるために力を入れていたもので、現在では多くの業態店舗でも扱われるようになっています。ですので基本的には年始恒例のイベントという意味合いが強いですが、小売店は在庫処分品を福袋として販売するわけではなく、そのためにメーカーから仕入れをするので一定の利益は確保しています。かつてはメーカーが売れ行きの悪い商品を福袋に入れてもらうということもありましたが、それですとお客は買わなくなってしまいますし、今の福袋は一つの店舗で多くのバリエーションを用意して、中身がある程度わかるようになっているので、目的買いするお客が多いです。

 家電量販店の場合はお客は『エアコンを買う』『冷蔵庫を買う』といったかたちで、ある程度目的を持って来店するケースが多いため、福袋を販売することによる次いで買いというのは、そこまで期待できないでしょうが、食品や雑貨など低価格の商品では、そういう効果も多少はあるかもしれません」

 小売チェーン関係者はいう。

「福袋は複数の商品を実質的に大幅値引きをして採算度外視で売るため、小売店にとっては利益的なうまみは少ないです。それでも扱う理由は、福袋の購入を動機として多くの客に来店してもらい、それ以外の商品を買ってもらうことにあります。たとえ来店時点で福袋が売り切れていても、正月になると日本人は財布の紐が緩みがちになるので『じゃあ、せっかくだから他のモノを買っていこう』となりやすいです。そのときに買ってくれなくても『この店は●●がこんなに安いんだ』といった印象を与えることができれば、次回以降の来店・購入機会につながります。

 また、毎年2月の節分の時期には、売れ残りによる大量廃棄の問題が大きく批判されていても、多くの小売店が恵方巻の販売に力を入れていますが、小売店は客足を落とさないために頻繁にイベントやお祭り的な要素を仕掛けて、常に売り場に変化を醸しだしていく必要があり、その一環という側面もあります。どれだけネット通販の規模が拡大しても、やはり小売店は客に来てもらわないと始まらないですし、特に家電など長く使う高額な商品の場合は実物を確認してから買いたいという消費者も一定数おり、店舗で実物を確認してから購入はそのチェーンのECサイトでするというケースもあり、実店舗の集客とECサイトの売上は密接につながっているのです」

転売屋の撲滅は困難

 では、これだけ転売屋の問題が大きくなった今、それをなくすための有効な対策というのはないものなのか。前出・西川氏はいう。

「有効な対策というのは現在でも“ない”というのが実情です。『身分証チェックなどを厳しくすればよいのでないか』という声もありますが、小売店が転売屋ではない一般のお客に対して、そのような失礼な行為をすることはできません。転売屋とそうではないお客を完全に見分けることもできないため、小売店側としては転売屋が一定数混ざっているだろうとは思いながらも、そこは仕方がないと割り切って販売しているというのが一般的でしょう」

 小売チェーン関係者はいう。

「大手の小売チェーンやメーカーもあの手この手で対策を施していますが、完全になくすまでには至っていません。ネット抽選にしたり事前に整理券を配布したりしても撲滅できませんし、購入時のマイナンバーカード提示などを条件にすると、それを認識しないまま遠方から来たり長時間行列に並んだ一般の客と揉めるという事態も想定されます。マイナンバーカードを持っていない人もいるでしょうから、なかなか難しいということになります。

 とはいえ、前日から長い行列ができたり、待っている人たちの間でトラブルが生じたり、店舗近くの路上で転売屋の業者が商品と金銭の受け渡しを行う光景が目立つといった状況になると、近隣店舗や住民への影響、地域の治安という観点で問題となってくる可能性もあるでしょうから、店舗側は何らかの対応を求められることになるかもしれません」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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