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40歳で1662万円、謎多き日本一の高給企業?

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「キーエンス HP」より
 産業用エレクトロニクスメーカー大手・キーエンスの創業者で代表権を持つ会長の滝崎武光氏が、3月21日付で取締役名誉会長になる。同氏は、キーエンスを高収益のFA(ファクトリーオートメーション)センサーメーカーに育て上げた。設立40年を迎え、山本晃則社長が指揮を執る体制を明確にする。

「キーエンスという会社を知っていますか?」「創業者の滝崎武光会長の名前を耳にしたことがありますか?」と問えば、おそらく多くの人が「ノー」と答えるだろう。キーエンスはメディアに出ることがほとんどないため知名度は低いが、実は日本で有数の高収益会社なのである。

滝崎氏は国内第5位の大富豪

【「日本の富豪50人」2014年ランキング(順位、氏名、所属、資産額)】
1位、孫正義、ソフトバンク社長、2兆488億円
2位、柳井正、ファーストリテイリング社長、1兆8512億円
3位、佐治信忠、サントリーホールディングス会長、1兆1648億円
4位、三木谷浩史、楽天社長、8008億円
5位、滝崎武光、キーエンス会長、6448億円
(出典:米経済誌「フォーブス」、14年4月2日発表、資産額は当時のレート1ドル=104円で換算)

 滝崎氏は日本屈指の大富豪で「フォーブス」による長者番付の常連である。滝崎氏と親族、資産管理会社が保有するキーエンスの株数は1643万株。好業績で株価は高騰しており、2月23日の終値は6万円を超えた。これに基づいて計算すると、滝崎氏ファミリーの資産額は9800億円超となる。「フォーブス」15年版で資産額が大幅に膨らむのは確実だ。

キーエンスの社員は日本一の高給取り

【「40歳年収が高い会社」ランキング(順位、社名、推定平均年収)】
1位、キーエンス、1662万円
2位、日本M&Aセンター、1602万円
3位、野村ホールディングス、1452万円
(出典:14年10月15日付東洋経済オンライン)

 ちなみに、30歳年収、生涯給料などの推計でも日本一となっており、早い話がキーエンスの社員は日本一の高給取りなのである。14年3月期の従業員2038人の平均年齢は34.8歳、平均年間給与は1440万円。「人件費は経費にあらず」の理念のもと、営業利益の1割程度を従業員に還元する人事政策を取る。平均年収は業績に連動して増減するため、好業績を追い風に14年3月期の従業員の平均年収は前年より118万円アップした。

 キーエンスの時価総額は三菱商事やパナソニックを上回る。株価はコンスタントに5万円台をつける“超値がさ株”だ。今年2月4日に10年来の最高値5万8390円をつけた。2月3日の終値で計算した時価総額(株価×発行済み株式数)は東証1部上場企業の23位に大躍進した。

 情報開示には消極的で、アナリスト泣かせの会社だ。このため、アナリストレポートの提供を拒否している証券会社もある。とはいっても業績は絶好調で、外国人投資家を筆頭に投資家の評価はピカイチだ。

驚異の売上高営業利益率52%、自己資本比率94%

【14年4~12月期連結決算】
売上高(前年同期比)…2421億円(26%増)
営業利益(同)…1265億円(36%増)
営業利益率…52.2%
総資産…9452億円
純資産…8900億円
自己資本比率…94.2%
(出典:キーエンス15年3月期第3四半期決算短信)

 14年4~12月期連結決算の純利益は前年同期比38%増の866億円となり、過去最高を更新。自動車工場の生産の自動化に伴い、センサーの売り上げが伸びた。円安の追い風もあって海外売上高が約4割増え、海外売上高比率は52%に上昇した。売上高営業利益率は52.2%で、売り上げの半分以上が儲けという日本一の高収益企業。銀行借り入れも社債も発行していない無借金会社でもある。自己資本比率94.2%は、これまた日本一だ。15年3月期通期の業績予想は公開していない。

倒産を糧に「無借金会社になる」と決意

 日本企業には珍しい高収益企業を作り上げた滝崎氏は、どんな人物なのか。1945年6月10日、兵庫県芦屋市生まれで、同県立尼崎工業高校卒後、28歳の時に同県尼崎市でリード電機を設立。86年には、商号を鍵(キー)と科学(サイエンス)を合成したキーエンスに変更した。翌87年に大阪2部、89年に東証2部に上場し、90年には両市場の1部に昇格を果たした。

 滝崎氏はメディアに登場することがないため、高収益企業をつくり上げるまでの足跡ははっきりしないが、倒産の経験から、無借金会社を標榜するようになった。工場を持たない「ファブレス経営」、値引きしない「コンサルティング営業」、20代でプロジェクトリーダーになれる若手中心の人事などをテコに、驚異的な超高収益企業をつくり上げた。

 09年には日本語ワープロ「一太郎」で一世を風靡したジャストシステムを傘下に収め、教育事業に力を入れ、業績のV字回復を果たしたのである。
(文=編集部)