大塚家具(本社東京、ジャスダック上場)は2月13日、創業者の大塚勝久会長が3月で取締役から外れて経営から退き、長女の久美子社長に経営権限を集中すると発表した。同日、同社は久美子社長を中心とする新経営体制を「会社提案」として株主総会(3月下旬)に提出。同社筆頭株主でもある勝久氏は、この会社提案に真っ向から反対する「株主提案」を株主総会へ提出したが、17日にはこの株主提案を同社として反対することを取締役会で決議。
世間の注目を集める、創業者会長である父と、外部で華麗なビジネスキャリアを積んできた娘との経営権争いは一旦収束の兆候を見せたが、勝久氏が18.04%の株を所有する最大株主ということもあり、いまだに火種がくすぶる状態が続いている。
大塚家具は勝久氏が創業し、一時は日本最大の家具販売チェーンを形成するなど隆盛を極めていた。しかし、2007年までは700億円台で推移していた売上高は減少に転じ、外部にいた久美子氏を09年に社長に迎えたが、経営改革にいそしんだとされる久美子氏は14年7月に解任され、勝久氏が社長復帰(会長兼任)した。その後、今年1月には久美子氏が社長、勝久氏が会長という体制に戻り、冒頭の発表で勝久氏は経営から退くという経緯だった。
勝久氏が社長時代、大塚家具に買い物に行くと入り口受付で個人情報登録(入会申し込み)をさせられ、案内に付く店員が必ず割り当てられた。例えば「ベッドを買いたい」ということなら、大型店舗内のあちこちに置かれたベッドをくまなくかつ詳細に説明され、「これだけの選択肢があるならこれでいいか」などと、どれかは買ってしまうことになる仕組みだった。そして、それらのどれも実は安くはない値付けだったのを覚えている。
久美子氏はこの方策を変え、オープンな入場方法に切り替え、来客トラフィックを増やそうとした。ところが、それによっても同社の年商は550億円ほどに減少し、低位安定的に推移してきた。14年に至りしびれを切らした勝久会長が、社長に兼任復帰したわけだ。
勝久氏は直ちに以前の販売方法に舵を切り直した。結果は、財務的には悲惨なものだった。年商は前年比微減の550億円強だったが、営業損益は4年ぶりの赤字で、その額は4億円以上に上った。この結果を受けて、久美子氏が昨年末に社長再登板となったわけだ。
●駄目だから、喧嘩してしまった
経緯を一見すると、久美子氏に軍配が上がったように見えるが、どうか。久美子社長は勝久氏の経営について次のように批判する。
「2014年10月に従来型店舗に変えた新宿ショールームでは、11月にサーモセンサーで人数カウントした結果、2013年に月間3万8000人だった来店客数が、14年には3万人へと2割以上も減った」(2月12日付東洋経済オンライン記事『速報!大塚家具、父・勝久会長が「退任」へ』より)