しかし、客数が減ったのに「売上高もその分減った、ということではない」(同記事)ともしており、つまり14年の大幅赤字は店舗を勝久方式に戻すための設備や経費の出費だったということである。
以上より、結論としては「久美子方式も勝久方式も、両方とも駄目だった」ということになる。両者とも共同経営者として、売り上げを09年以降押し上げていない。「駄目だから、喧嘩してしまった」というのが正しい。
●「会社の再ポジショニング」という難題
そのため、経営権を再び握った久美子氏が対峙しているのは、販売方法の模索ではなく、それを超えた「会社の再ポジショニング」という難題だ。
経営学者マイケル・ポーター氏の「競争の3大戦略」に当てはめて分析すると、「コストリーダーシップ戦略」を取っているのはニトリとイケアであり、「差別化戦略」はカッシーナ・イクスシーだろう。久美子氏が描く大塚家具の戦略というと、焦点を絞り切れていない。
「本当はみんなちょっといいものを提供してくれるお店を求めているはずだ。(略)大塚家具は高級家具だけ、と思われがちだが、本当は幅広く扱っている。(略)今後はサービスそのものをビジネスにしていきたい」(同記事)
「競争の3大戦略」における3番目の戦略は「選択戦略」といい、コストリーダーシップ戦略か差別化戦略のどちらかに絞るべきとしている。久美子氏のように全部をやろうとするのは駄目であり、どこかに自社をポジショニングしなさいと演繹できる。
「差別化戦略」を取っているカッシーナ・イクスシーは絶好調だ。12年の売り上げを15年にはほぼ倍増の100億円強にすると見込み、営業利益は6億円を超えるとしている。コストリーダーシップ戦略は取れないだろう大塚家具は、カッシーナ・イクスシーの戦略点にポジショニングするのも選択肢だ。
ただし、差別化戦略点では顧客の絶対数は少なくなる。家具の場合なら富裕層だ。実際カッシーナ・イクスシーは国内に4店舗しか展開していない。
現在15店舗の大塚家具は、これを5店ほどに減少して大幅な利益増を目指すという戦略肢がある。父娘は、同社をどこに導いていくのだろうか。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)