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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

大塚家具は復活できる 騒動は千載一遇のチャンス 批判の的だったナイキ成功戦略より検証

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茹でガエルの状態にあった大塚家具


 お家騒動で揺れた大塚家具の3月の店舗売上高は、前年同月比37.8%減と大幅にダウンした。消費増税による駆け込み需要のなかった2013年3月と比べても17.1%の減少となったため、今回の騒動によるブランドイメージ悪化が少なからず影響しているといえそうだ。今後は、顧客の信頼をどう回復し取り戻すかが重要な課題であることは間違いない。

 しかし、視点を変えれば、今回の騒動は大塚家具にとって千載一遇のチャンスでもある。そもそも、騒動前から同社の売り上げは伸び悩みが続いていた。07年までは比較的好調だったものの、08年のリーマンショックで高額消費が冷え込み、業績は急激に悪化。その後、景気は回復したものの家具業界の潮目はすっかり変わってしまい、高価格帯ではカッシーナなどの高級家具ブランドとの競争が激化し、中価格帯ではリーズナブルなIKEAやニトリに顧客を奪われ、低迷した状態が5年以上も続いている(図1)。大塚家具は今回の騒動がなかったら、世間の注目を集めることなく静かに衰退を続けていたかもしれない。


 それが、今回の騒動を機に一気に世間の注目を浴びた。家庭を幸せにする道具を販売する家具メーカーにとっては良くないイメージだが、メディアが日々こぞってニュースに取り上げることによって、これまではIKEAやニトリ、カッシーナで買い物をしても大塚家具のショールームには行ったことのない人たちや、もしくは名前すらほとんど聞いたことがなかったような人たちの頭の中に、「大塚家具」という言葉が刻まれた意義は大きい。

アメリカでかつては「ブラック企業」だったナイキ


「新しい店舗をオープンすれば抗議運動や不買運動がたちどころに起きる。自社は労働者をこき使い、強制的に残業させ、奴隷並みの賃金しか払わない会社として見られるようになっている。労働者を酷使する環境でつくられた商品を国民が買いたいとは思えない」

 Fuel Bandなどの革新的な製品を出し、世界的なスポーツ・ブランドとして君臨する今のナイキからは想像しにくいが、今でも会長をつとめるフィル・ナイト氏が自らこう発言するほど、1990年代のナイキはブラック企業として知られ、業績も低迷していた。

 それが、良くも悪くも同社の一挙手一投足が注目されている時期に、同社を強く批判していた「敵」だったグローバル・エクスチェンジという市民団体との対話を始め、敵を味方に変える努力を開始。工場の労働環境をモニタリングして公表する、環境や社会配慮など独自指標で工場を評価するなどの施策を積極的に進め、そのメッセージを発信することでネガティブなイメージを払拭し、イメージの刷新に成功した。アメリカでナイキが短期間でブランドイメージの刷新に成功できたのは、世間の注目度が高い時期に、このように矢継ぎ早に手を打っていったことが大きい。