大塚家具は復活できる 騒動は千載一遇のチャンス 批判の的だったナイキ成功戦略より検証
熱が冷めないうちに、大胆な逆張りを
大塚家具も過去に比べれば話題性は高いものの、それでも株主総会前の一時期に比べると世間の注目度はだいぶ落ち着きを取り戻している。今回の騒動を逆手にとって顧客を取り戻すには、早いうちに大胆な手を打つことが必要だ。
新しい経営体制の下、先週末4月18日から「新生・大塚家具大感謝フェア」を開催しているが、久美子社長自ら店頭でガーベラの生花を手渡して出迎えをしたこともあり話題にはなっている。ただ、本来であれば、もっと思い切った取り組みが必要だ。例えば、「仲直りフェア」と称して、父親で創業者の大塚勝久元会長と娘の久美子社長の親子が仲良く肩を組んで、笑顔でフェア情報を発信したり、親子で来店して買い物をすると「仲良し割引」が適用されてお買い得になるなど、今回の騒動を逆手に取ったパロディに近いような逆張りの手も有効だろう。「逆張り」にすることでソーシャル上でのバズを発生しやすくすると同時に、「親子」を絡ませることで「親子消費・三世代消費」の新規顧客層を獲得できる可能性がある。
「大塚家具」から、「KEN OKUYAMA」へ
ただし、こうした注目度の高さを利用した手法は、当然ながら根本的な解決にはならない。最終的には「大塚家具」というブランドに頼らない売り方をすることが有効だろう。一般的に、ブランドを活用する戦略には、企業ブランドを訴求するやり方と、商品ブランドを訴求するやり方の2パターンがある。業界や企業の戦略によって違いはあるものの、資生堂、花王のように日本企業は企業ブランドを重視する傾向にあり、P&Gやユニリーバのように欧米企業は商品ブランドを重視することが多い。
では、家具業界はどうだろうか。大塚家具、IKEA、ニトリ、カッシーナなど、ほとんどが企業ブランドを重視している。商品ブランドをすらすらと言える人は少ないのではないだろうか。
大塚家具にとって今後の成長の鍵はここにある。同社はヨーロッパの高級家具ブランドであるRolf BenzやPoltrona Frau、Durestaなどと独占契約を結んでいたり、フェラーリや東北新幹線の「はやぶさ」「こまち」などをデザインした世界的な工業デザイナー奥山清行氏が代表を務める「KEN OKUYAMA」 と事業提携して共同で商品開発やプロモーションをするなど、魅力的な商品ブランドを数多く持っているのだ。こういったひとつひとつの商品ブランドを立たせる戦略へと移行することができれば、大塚家具は長い低迷状態を抜け、「V字回復」ならぬ「U字回復」ができる可能性が大いにある。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員)