あなたの職場に、なぜか周囲とぶつかることの多い「困った人」はいませんか? ムチャな要求をしたり、ロクな説明もなしにいきなり大きな仕事を振ったり…。このような人は往々にして根回しをすることがありません。そして、相手の事情も汲まずに自分の意見を押し通してばかりいると、組織からの評価は下がっていくばかりでしょう。
『成功したければ日本型エリート思考』(扶桑社/刊)の著者である山口真由さんは、財務省や弁護士事務所での勤務経験を踏まえ、日本社会で出世する上では「根回しこそ最強のコミュニケーション術」と説きます。
なぜなら、いくらグローバル化が進んでいるといっても、日本の組織で仕事を進めるには、やはり空気を読み、慣習を大切にすることが重んじられるから。そうすると、自然と行き着くのが「根回し」です。
■根回しがうまい人の特徴は?
山口さんは、根回しのうまい人の特徴を「『てへぺろ』がうまい人」と表現します。
つまり、相手から怒鳴られても「いやいや、まあまあ」とうまく怒りをかわし、最後に「てへ」とできる愛嬌のあるタイプは、往々にして根回しがうまいというわけです。
たしかに根回しがうまい人ほど、周囲から嫌われずに自分の意見を通すことができることを考えれば「愛嬌のありなし」は重要でしょう。
ただ、「根回しには愛嬌が必要」といわれても「それじゃ結局、“キャラ”勝負ってこと?」と思うかもしれません。ですが、愛嬌がなくても根回しをすることは可能です。
■根回しにおいて大切なのは「面子」
山口さんが根回しのポイントとして挙げるのは「相手の面子をつぶさないように働きかけること」。逆に、ロジカルシンキングによって相手を理屈でねじ伏せるのは、いちばんやってはいけないことだといいます。
そこで今回は「面子をつぶさないこと」の重要性を実感させられる、あるエピソードを紹介しましょう。
弁護士事務所に勤めていた当時、山口さんがある会議に参加したときのこと。ある提案を通すかどうか決めるにあたり、会議の参加者のうち、ひとりだけが激しく反対し、しかもその反対理由が的外れなものでした。
そのとき会議の議長はどのように立ち振る舞ったのか。結論からいえば、議長は多数決を取ってその場で結論を出すことをしませんでした。もしそのようなことをすれば、反対者の面子をつぶすことになると判断したからです。