大学の“改悪”が進められようとしている。手始めは、国立大学法人(以下、国立大学)だ。
2012年12月26日に発足した第2次安倍晋三内閣は、国立大学改革の一環として「今後10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校以上をランクインさせる」という目標を設定した。
「世界ランキング何位」あるいは「世界トップ100の中に何校」という単純明快さは、政治的な目標としてはぴったりだったのだろう。13年6月に閣議決定された成長戦略「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」には、前述の内容が成果目標として盛り込まれた。
では、いったいどのように国立大学のランキングを向上させていくのだろうか。その答えは、6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015~経済再生なくして財政健全化なし~」と「『日本再興戦略』改訂2015―未来への投資・生産性革命―」に記されている。
主なポイントは
(1)大学改革と競争的研究費改革の一体的推進
(2)国立大学法人運営費交付金等の重点配分を通じた大学間の連携や学部等の再編・統合の促進
などとなっている。その具体的方向として、
(1)国立大学が重点支援のための3つの枠組み「地域貢献」「特定分野」「世界水準」のいずれかを選択し、その枠組みの中で改革の取り組み状況等について評価を行い、国立大学運営費交付金のメリハリある配分を行うこと
(2)特定研究大学、卓越大学院(仮称)、卓越研究員(仮称)の新たな重点支援制度
などを打ち出している。前述の3つの枠組みの具体的内容とは、以下のようなものだ。
「地域貢献」…地域貢献および強み・特色のある分野での世界・全国的な教育研究の推進
「特定分野」…強み・特色のある分野での、地域というより世界・全国的な教育研究の推進
「世界水準」…全学的に世界で卓越した教育研究・社会実装の推進
簡単にいえば、「今後、国立大学は『地域貢献』『特定分野』『世界水準』のどれを重視するかを選択しなさい。その上で、成果によって、国立大学法人運営費交付金を傾斜配分しますよ」ということだ。
つまり、国立大学は国の考えと一致する方向に力を入れ、さらに成果を挙げていれば交付金が増え、その逆であれば交付金が減るという仕組みだ。国立大学の教育の自由をなくし、「金で頬を叩くことで、言うことを聞かせる政策」といえる。
現場の教職員からは、「大学を色分けする政策であり、問題が多い」との声が多く聞かれる。特に、「強みや特色という言葉の背景には、実用的なものを求めるニュアンスが滲み出ており、最も大事な基礎研究などが軽視される」「いわゆる文系には、交付金が回ってこなくなるのではないか」と懸念されている。