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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

消費税、最終的に最高32%との政府試算 収支改善なければ財政破綻必至か

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
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消費税、最終的に最高32%との政府試算 収支改善なければ財政破綻必至かの画像1我が国の財政に関する長期推計(「財務省 HP」より)

 あまり知られていないが、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は2015年10月9日、起草検討委員の提出というかたちで「我が国の財政に関する長期推計」を公表した。以下は10月9日付産経新聞記事『財政審、どのケースも財政破綻…財政の長期試算』からの引用である。

<財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は9日、国と地方を合わせた財政の長期試算を公表した。平成32(2020)年度に対国内総生産(GDP)比で基礎的財政収支が黒字化した場合など5つのケースを示したが、33年度以降も収支の改善がなければ、いずれも債務は72年度にGDPの5倍以上に膨らむと推計した。財政破綻は確実だとする内容で、社会保障費の抑制などの歳出改革に加えて、行間から一段の消費税増税など歳入増の必要を大いににじませた。(略)

 いずれのシナリオでも、借金の膨張を抑えるには高齢化に伴う歳出増に対する構造改革が不可欠で、試算では32年度にGDPに対し2.46~11.12%の収支改善が必要とした。この収支改善幅は、ドイツやフランスなどの欧州諸国よりおおむね高い水準だという。

 また「中長期的な収支改善のため歳出だけでなく歳入の面からも議論が必要だ」との見解が示された。

 会合後、記者会見した財政審の吉川洋会長(東大院教授)は「債務残高がGDP比で膨張していくというのは破綻するということだ。それは避けないといけない」と述べた(以下、略)>

 試算は14年4月に公表した長期推計の改訂版であり、高齢化で急増する社会保障費が将来の財政に与える影響を分析するため、いくつかのケースにおいて、60年度までの長期の財政の姿を展望し、財政の安定化(=60年度以降の債務残高対GDP比の安定化)に必要な基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)の改善幅を試算したものである。このうち重要なのは、記事中の「いずれのシナリオでも、借金の膨張を抑えるには高齢化に伴う歳出増に対する構造改革が不可欠で、試算では32年度にGDPに対し2.46~11.12%の収支改善が必要とした」との部分であり、簡単に説明しておこう。

16年度予算案が試金石

 まず、各ケースでは、17年4月の消費税率引き上げは織り込んでいるが、この試算では、社会保障費を中心とする歳出改革の努力が弱く、現行制度を前提として、20年度に国・地方のPB均衡が実現できないケース(ケース1)と、20年度にPB均衡が実現できているケース(ケース2)等を扱っている。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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