同研究では、米ピッツバーグ大学の研究グループが447人の健康な中年層を対象に7日間、健康状態と睡眠習慣や食生活を調査した。その結果、いわゆる平日の睡眠スケジュールを休日も持続している被験者は1人もいなかったという。被験者の約85%が休日は通常より遅くまで寝ており、平均44分間長く寝ていたようだ。
そして、同研究によると、平日と休日の睡眠スケジュールの変化が大きければ大きいほど、代謝系の健康問題への影響が大きくなるという。睡眠スケジュールの違いが、血中脂質の増加やBMI(肥満度)の上昇、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少などと一致しており、この相関関係は、運動やカロリー摂取量、飲酒など、ほかの健康要因を調整した後も変わらなかったという。
平日の睡眠不足を補うために、週末は長く眠る――。このような毎週の睡眠スケジュールの変化は、体内時計を狂わせることにつながり、健康問題を引き起こす恐れがある、と同研究グループは推測している。
睡眠時間の変化が健康に及ぼす悪影響について、新潟大学名誉教授の岡田正彦氏は以下のように語っている。
「昔から、健康の維持には『恒常性』が大切だといわれてきました。人間は、体内環境を一定に維持して初めて、健康が保てるようにできているということです。そして、そのためには、環境や習慣、日々の生活リズムが一定でなければなりません。
最近、この恒常性の大切さを示す研究が多く行われています。例えば、アメリカで行われた調査によれば、『寒冷地』に生まれ育った人が『暑い地域』に移住する、あるいはその逆の場合、健康寿命(介護などの必要がなく、健康的に日常生活を送れる状態)が少し短くなってしまうそうです。
また、ドイツの調査では、夏と冬で時計の針を遅らせたり進めたりする、いわゆる『夏時間(daylight saving time)』を実施している地域で、心筋梗塞の発生率が少し高くなっていることもわかりました。また、睡眠障害も起こりやすくなるようです」
一番健康な睡眠時間は6時間?
環境やリズムが変化することによって、体内に大きな変化が表れるようだ。また、睡眠と健康の関係性について、岡田氏自身も大規模な学術調査を行ったことがあるという。