NEW
手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

「当期純利益」至上主義が企業を滅ぼす?「目先の利益」追及が危機的経営を招くおそれも

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「Thinkstock」より
 前回の本連載記事では、ROE(自己資本利益率)という資本効率性指標の問題点について述べましたが、今回は当期純利益という利益指標について考えていきます。


 当期純利益は非常に注目を浴びる指標ですが、それには3つの理由があります。まずは、損益計算書の「ボトムライン(損益計算書の最後に示される最終利益)」であること。次に、ROEの分子となること。最後に、利益目標の指標として利用されることが増えているEPS(一株当たりの当期純利益)の分子となること。つまり、当期純利益が拡大すれば、(自己資本が一定であれば)ROEが改善し、EPSも増加して「良い会社」ということになります。

 ただし、注目を浴びる当期純利益であっても、万能な利益指標ではなく、取り扱いには注意が必要です。なぜならば、当期純利益が拡大したからといって、必ずしもキャッシュフローが増加し企業価値が創造されるとは限らないからです。実は、当期純利益には、前回記事で述べた「悪いROE」の根源となりうる危険が潜んでいます。今回は、そのような当期純利益の問題点にフォーカスを当てていきます。

会計に存在するさまざまな利益指標


『ROEが奪う競争力 ―「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(手島直樹/日本経済新聞出版社)
 当期純利益は、前述の通りボトムラインであるため損益計算書の最後に示されますが、損益計算書を見るとボトムラインに至るまでの間にさまざまな利益指標が存在することに気づきます。そこで、さまざまな利益指標を紹介しながら、当期純利益の特徴を見ていくことにしましょう。

(1)売上総利益

 売上高から売上原価を差し引いた利益であり、いわゆる粗利です。コストとして売上原価しか差し引いていないため、利益指標としての有効性はやや限定的だと思われます。

(2)営業利益

 売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益であり、本業の利益創出力(いわゆる稼ぐ力)の指標としては最適です。ただし営業利益は、実際のキャッシュアウトを伴わない減価償却費やのれん償却費なども費用として含まれているため、それらを足し戻し調整した利益指標がEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)として広く利用されています。

(3)経常利益

 営業利益に営業外収益(受取利息・配当金など)を加え、営業外損益(支払利息など)を差し引いた利益であり、本業の利益創出力ではなく、営業外の要因も含めて企業としての経常的な利益創出力を計る指標として有効です。