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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

過去3年間のGDP値、間違っていた可能性…消費再増税延期の判断に利用、実は消費復調か

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内閣府庁舎(「Wikipedia」より/Yuukokusya)

 政府・与党は現在、統計改革を推進している。それは、統計法(平成19年法律第53号)第1章(目的)第1条が定めている通り、公的統計が「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」であり、「国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与」するためである。

 人類が獲得した重要な「知識」は公共財の性質をもち、公的統計も民間部門が合理的な意思決定を行うための一種の「公共財」の役割を担うが、統計データは政府の政策決定でも利用される。例えば、巨額の債務を抱える日本財政との関係で、ここ数年の間で最も大きな役割を担ったのは、国民経済計算(GDP統計)の統計データであろう。

 というのは、安倍晋三首相は2014年11月において、15年10月に予定していた消費税率の引き上げ(8%→10%)を18カ月延期することを決断したが、16年6月にも、17年4月に予定していた増税を再び延期する判断をしたからである。

 これら判断の一つの材料となったのが、内閣府が公表する国民経済計算(GDP統計)の統計データである。政府は14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げたが、内閣府が公表するデータを見る限り、同年4月以降、民間消費は低迷していると思われていた。



 実際、上記図表の「旧GDP統計」(平成17年<2005年>基準)をみると、民間最終消費支出(実質)は、14年4月の増税前に駆け込み需要で急増し、増税後は反動で急減、それ以降は横ばいで推移している。すなわち、旧GDP統計では図表の点線のように、民間消費は「L字型」で推移している。

 しかし、内閣府が最近公表した「新GDP統計」(平成23年<2011年>基準)をみると、民間最終消費支出(実質)の推移は異なる。図表の実線のように、民間最終消費支出(実質)は、14年4月の増税前に駆け込み需要で急増し、増税後は反動で急減するところは同じだが、それ以降は緩やかに回復している。すなわち、新GDP統計では、民間消費は「V字型」に近いかたちで推移しており、14年の増税の影響は徐々に解消に向かっている可能性が高い。

 これは、増税後、民間消費は「横ばい」あるいは「下落気味」と指摘されていたが、決して右肩下がりでも横ばいでもなく、むしろ「復調している」というのが事実であることを示唆する。

上方修正の理由


 では、新GDP統計で民間消費が上方修正された理由は何か。現時点のデータで断定はできないが、新GDP統計において、内閣府はサービス分野の利用データの拡充等を行っており、それが関係している可能性がある。すなわち、以前から不備が指摘されていたサービスへの家計消費の動向がより精緻に補足された結果、民間消費が上方修正され、増税後の民間消費水準は、旧GDP統計で認識されていたよりも底堅く、回復基調であることが判明したのではないか。

 もっとも「歴史にifはない」ため、過去の政策判断を修正することはできない。この意味でも公的統計は極めて重要であり、今後は投資支出のなかに人的資本への投資を取り入れることなども考えられ、さらなる公的統計の改良を通じ、公的統計がより科学的かつ正確な政策立案に資するように改革を進めていく必要がある。

 また、次回の増税判断に向け、新GDP統計も利用しつつ、14年の増税に関する影響やそれ以降の民間消費の動向についても、しっかりとした検証を行うことが望まれる。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)

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