政府のマニフェストのひとつでもある、「観光大国」への道。実際に訪日観光客の数は、順調に増加しており、近年では都市部だけでなく、地方都市が受ける恩恵も無視できないものになっている。
特に、旅行者のなかでも“上客”になっているのが、台湾からの訪日観光客だろう。実際に人口当たりの観光客の数は香港と並び、トップクラスの高い数字を残している。だが、米国でドナルド・トランプ政権が発足したことにより、その勢いは収束する可能性が浮上してきている。
台湾に拠点を置く訪日向け旅行エージェントは、トランプ政権が台湾国内に与える影響をこう分析する。
「もともと台湾の産業は、電子系やIT関連の部品などの精密機械分野が強みで、輸出先は中国本土と香港で約4割を占めます。トランプ氏が大統領になったことで米中関係の悪化が懸念されています。そのため、現段階でトランプ氏との関係性が良好な現政権の存在が、ネックになる可能性もあります。仮に米中関係が悪化すると、台中関係にも変化が生まれ、国内メーカーの業績が落ちると予測されています」
台湾は女性の社会進出が進んでおり、結婚後も働くというスタイルが定着している。その影響もあり、貧富の差は激しいながらも中流家庭の数も年々増加している。だが、主産業が縮小すれば、今後は職に溢れる働き手が出てくるとおそれがある。そうなると、真っ先に家計から削減されるのは、娯楽費、旅行費と考えられる。
前出エージェントよると、台湾人の日本ツアーの1人当たりの平均予算は約12万円だという。個人旅行の場合は、もう少し値段が下がるが、それでも他国からの観光客に比べて安い金額ではない。
「現在の台湾の景気は、良くも悪くもないといった状況です。しかし、今後は景気が徐々に下降するとの見方が大勢を占めています。トランプ政権の影響によって、劇的に訪日観光客が減るかは不透明ですが、少なくとも旅行中に使う買い物や飲食での代金は減っていくと思います。実際のところ、すでに食事や買い物の時に財布の紐が固くなっていると感じています。ツアーの団体客からも、『昼食は1000円以内、夕飯は3000円以内』などと細かい要望が入るようになってきています。お土産や宝石店を周るコースも、ツアーから省かれるというケースも出てきました」(同)