韓国軍の内部ネットワークに対する北朝鮮のハッキングで、朝鮮戦争が全面再開された際に適用となる米韓軍の軍事作戦「作戦計画5027」(以下、「5027」)が流出していたと報じられているが、実は、筆者は2006年2月に「5027」に関する本を出版したことがある。
この「5027」は米軍が韓国軍と共同で1974年から策定し、その後の北朝鮮の変化などに合わせて随時、変更を加えてきた軍事作戦計画だ。筆者が1999年から2000年まで米ハーバード大学の中堅ジャーナリストの再教育機関とでもいうべき「ニーマンファウンデーション(協会)」のフェローとして1年間ハーバード大で研究生活を送った際、米政府関係者から当時としては最新の「5027」を入手した。それは英文のレター用紙500枚以上あった。
帰国後、『北朝鮮最終殲滅計画―ペンタゴン極秘文書が語る衝撃のシナリオ』 (講談社プラスアルファ新書)として出版した。主に、米国が1974年から策定し、随時変更を加えてきた対北朝鮮軍事作戦であるOperation Plan 5027 (OPLAN5027)の変遷とその間の状況を解説。後半は軍事を中心とした過去15年ほど(2005年12月まで)の経過と対応を述べ、新聞情報などをまとめて当時の現実的状況を明らかにしたものだ。
当時は米国がブッシュ(息子)政権、北朝鮮は金正日指導部の時代で、現在の北朝鮮を取り巻く現実的な状況はまったく異なっているが、軍事作戦そのものは米韓両軍が陸上で北朝鮮の進撃をとどめて北上すると同時に、北朝鮮の日本海と黄海の東西両海岸に海兵隊を上陸させ、平壌一帯を制圧するという作戦は、基本的に変わらないとみられる。
ただ、その後、米特殊部隊によるウサマ・ビン・ラーディン暗殺計画が成功したこともあって、金正恩委員長を襲撃するという「斬首計画」も「5027」に加えられているとみられる。イラク戦争と同様、開戦当初は爆撃機による空襲を中心にして、都市部を徹底的に壊滅させて、その後、地上戦に移行し、残っている敵の部隊を攻撃し軍を崩壊させ、最高指導者を捕獲、あるいは殺害するという基本的な計画は変わらないだろう。