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瀕死のパチンコ業界に出玉「5万円以下」規制がトドメ…メーカーもホールも売上激減か

文=編集部
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瀕死のパチンコ業界に出玉「5万円以下」規制がトドメ…メーカーもホールも売上激減かの画像1パチンコ玉(「Wikipedia」より/MichaelMaggs)

 警察庁は8月24日、ギャンブル依存症対策として、パチンコの出玉やパチスロのメダル獲得数の上限を現行の3分の2に規制するため、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)施行規則などの一部を改正した。2018年2月1日から施行し、3年間の経過措置期間を設ける。

 新しいルールでは、標準的な遊技時間を4時間と想定している。時間内のパチンコ玉の獲得総数を、購入した玉の数(=パチンコ台で発射した玉の数)の1.5倍未満とする新しい基準を設けた。大当たりの上限も、現行の2400個から1500個に引き下げる。これにより、客の儲けを現行の十数万円から5万円(球1個を4円と換算)を下回るようにする。ポイントは時間内の出玉を5万円分以下にすることだ。パチスロなども同水準とする。

 パチンコホールは現行の基準で警察の認定を受けた機器を最大3年間使うことができるが、21年までに新ルールに基づいた機器に入れ替えなければならない。

 警察庁は7月、改正案を発表。パブリックコメントを募集、1万4838件の意見が寄せられた。規制強化に対して「昔ながらの健全な大衆娯楽になる」という賛成意見があった一方、「客離れが進み、パチンコ店、遊技機器業者などの経営が苦しくなる」との反対意見も寄せられた。「遊技としての魅力が損なわれる」というパチンコファンの声もあった。

縮小するパチンコ・パチスロ市場に出玉規制が追い打ち

 株式市場では、出玉規制の決定を受けパチンコ・パチスロ機メーカーの株価が下落した。規制強化によって、全国各地のパチンコ・パチスロホールで客数の減少や収益力の低下が起こり、新台の入れ替え需要も減少する。その結果、メーカーの業績へのダメージは避けられないとみて、株価が下落したわけだ。

 パチンコ・パチスロ機メーカー最大手の平和の株価は、年初来高値の3100円(3月14日)から同安値の2136円(9月6日)へ31%下落した。10月2日の終値は2228円だ。

 平和は07年、パチスロ機主体のオリンピア創業者の石原昌幸氏にオーナーが交代。ゴルフ場運営会社2強の一角、PGMホールディングスを買収してゴルフ場事業に進出した。

 17年3月期の売上高は1862億円で、このうちパチンコ・パチスロ機は前期比20%減の1081億円。販売台数はパチンコ機が前期比4.1万台減の19.2万台、パチスロ機は同3.1万台減の8.0万台と落ち込みが激しい。一方、ゴルフ場の売上高は780億円。数年後にはゴルフ場部門がパチンコ・パチスロ機を上回るとみられている。

 SANKYOの株価は、年初来高値の4140円(3月14日)から同安値の3475円(9月6日)へ16%下落した。10月2日の終値は3620円だった。

 SANKYOはパチンコ・パチスロ専業メーカーだ。17年3月期の売上高は前期比41%減の814億円に激減した。販売台数はパチンコ機が12.3万台減の17.2万台、パチスロ機は4.7万台減の3.2万台になった。

 セガサミーホールディングス(HD)の株価は、年初来高値の1848円(1月10日)から同安値の1370円(5月23日)へ26%下落している。10月2日の終値は1581円だった。

 セガサミーHDは04年、アミューズメント機器のセガとパチスロのサミーが統合して発足。17年3月期の売上高は、前期比5.4%増の3669億円だ。このうち遊技機事業が1482億円で、全社の4割を占める。主力のパチスロ機の販売台数は、前期比7.3万台増の21.5万台。「北斗の拳」シリーズがドル箱だ。しかし、パチンコ機の販売台数は13.8万台で前期より6万台減った。

 フィールズの株価は、年初来高値の1412円(1月11日)から同安値の1090円(9月6日)へ23%下落した。もともとはパチンコ・パチスロの販売会社。フィールズにはSANKYOが15%出資(17年3月末時点)しており、第2の大株主だ。10月2日の終値は1116円だった。

 ユニバーサルエンターテインメントの株価は、年初来高値の4765円(3月7日)から同安値の2611円(8月21日)へ45%下落した。10月2日の終値は3390円だ。旧社名はアルゼ。パチスロ大手で米ウィンと組み、フィリピンでカジノホテル「マニラベイリゾーツ」を運営しているが、対立関係となり係争中だ。パチンコ・ショック以外にもスキャンダルがあった。

 このほかパチンコ・パチスロメーカーは、「海物語」シリーズが中高年に人気の三洋物産、人気アイドルグループAKB48の利権をもつ京楽産業、「宇宙戦艦ヤマト」がヒットした中堅の藤商事などがある。藤商事の下落率は23%。10月2日終値は1215円。

 周辺機器メーカーではホール向けコンピュータシステムの最大手、ダイコク電機が知られている。ダイコク電機の下げは20%となった。10月2日の終値は1716円だ。

パチンコ参加人口は1000万人の大台を割る

 公益財団法人日本生産性本部がまとめた「レジャー白書2017」によると、2016年(暦年)のパチンコの参加人口は940万人(前年比130万人減)、市場規模は21兆6260億円(同1兆6030億円減)。参加人口、市場規模ともに大幅に減少した。

 参加人口は1980年代から95年まで、2800万~2900万人で推移。「パチンコファンは3000万人」と呼ばれた時期だが、それ以降は減少に転じる。98年に2000万人、07年に1500万人という節目を割り込んだ。16年の参加人口は13年以来、3年振りに1000万人を下回り、過去20年の調査で最低を更新した。

 パチンコ・パチスロ業界は、90年代の連チャン機や2000年代前半の爆烈機ブームと規制強化のいたちごっこを続けている。監督官庁である警察のサジ加減で、業績が大きく左右される。

 来年2月に実施される出玉規制強化で参加人口、市場規模ともに激減することは間違いない。そのため各社とも多角化に取り組んでいるが、パチンコ・パチスロの専業メーカー、周辺機器メーカーやパチンコ・パチスロホールの淘汰は避けられないだろう。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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