国土交通省が1月22日から3月11日まで「相乗りタクシー」の実証実験を実施している。これは、目的地が同じ方向の人と相乗りすることによって、割安にタクシーを利用することができるという仕組みだ。
対象エリアは東京23区、武蔵野市、三鷹市。配車アプリを使い、大和自動車交通グループ(649台、iPhoneとAndroidで利用可能)と日本交通グループ(300台、iPhoneのみ利用可能)の2社が、利用ルートがマッチングした乗客同士を送り届ける。
大和自動車は30カ所の乗り場(東京駅八重洲口や神田駅南口、錦糸町駅前、池袋駅西口など)から、目的地が近い客同士を送り届ける「この指とまれ」方式。一方、日本交通は乗り場の指定はなしで目的地が近い客同士のフリーマッチング。いずれも、料金は事前登録したクレジットカードによる支払いとなる。
乗客のメリットは、単独で乗るよりも料金が安くなることだ。大和自動車によると、錦糸町駅前から浦安駅、船橋駅、津田沼駅で1人ずつ降ろした場合、浦安駅下車では約5960円が約3690円、船橋駅下車では約8600円が約5530円、津田沼駅下車では約9970円が約6450円と、単独乗車よりも3~4割ほど安くなる(深夜料金の22時以降、高速道路料金は除く)という。
1時間探しても相乗り相手は見つからず
2月上旬の午後。Androidのスマートフォンを使っている筆者は、大和自動車のアプリをダウンロードしてJR錦糸町駅から新小岩駅まで(約3000円)のマッチング相手を1時間ほど探してみたが、タクシー利用の少ない時間帯で電車も動いているため、相乗り相手は見つからなかった。
こうしたケースでのマッチングは難しく、ルートや時間帯を考えると「終電を逃した後」「電車よりもタクシーのほうが速くて便利」といったケースがうまくいきそうだ。そこで、四ツ目通りをまっすぐ進行する東陽町(約1450円)までにルートを変更したが、まだ帰宅時間前ということもあって、やはり相乗り相手は見つからなかった。
次に、大和自動車と日本交通のドライバーに「相乗り客を乗せたことはありますか?」と聞いてみたが、どのドライバーも「うちの会社はやっていません」と言っていた。都内を走るタクシーは約5万台。まだ実験期間中ということもあり、なかなかめぐり合うことができない。
30台目ぐらいで、ようやく「うちはやっているけど、僕はやったことない」という日本交通のドライバーに出会い、話を聞かせてもらった。
「仲間のドライバーが通常5000円のコースで2人乗せたそうです。料金は2700円と2800円だったとか。そのため、『ドライバーにとっても最大1割増収になる』と会社が言っていました」(日本交通のドライバー)
料金が3~4割ほど安くなる相乗りは、ドライバーにとっても増収となるコース設定をしているようだ。このケースは終電がなくなった後だったそうだが、確かに終電後は「帰宅時間」よりも「低価格」が優先されそうで、告知に力を入れれば利用率も高まると思われる。
ただ、当然ながら見知らぬ客同士が同乗することになる。車内の雰囲気はどうだったのだろうか。