ことを報じる8月9日付朝日新聞
「住宅購入なんて、とてもじゃないけど無理……」と考えている人でも、身近に増税を理由に住宅購入の検討を始めたり、実際に買った人が現れたら「自分も買ったほうがよいのだろうか?」と浮き足立ってしまうだろう。そこで、冷静に考えるための材料として、住宅購入と消費税増税に関して押さえるべき5つのポイントを確認しておこう。
【ポイント】
1.消費税がかかるのは建物部分だけで、消費税による違いは数十万円から100万円程度。
2.増税前と後、どちらがお得かはわからないし、考えても意味がない。
3.増税後の反動による値下がりはあるとは思われるが、反動への措置もある。
4.マンションと一軒家で扱いが違う。
5.本当に家を買っても大丈夫なのか?
以下、1つずつ確認したい。
1.消費税がかかるのは建物部分だけで、消費税による違いは数十万円から100万円程度。
消費税がかかるのは建物部分だけで土地にはかからない。3000万円の物件があったとして、建物部分が2000万円ならば、消費税による影響は8%時ならば3%アップで60万円、10%時ならば5%アップで100万円ということになる。決して少ない金額ではないが、数十万円から100万円程度の違いが、何千万円もの買い物を急ぐ理由になるのだろうか? ぜひ冷静に考えてほしいところだ。
2.増税前と後、どちらがお得かはわからないし、考えても意味がない。
「消費税が上がる前に買ったほうが得」という意見に対して「増税後は反動で大きく下がる。だから増税後に買ったほうが得」という意見もある。これはどちらが正しいのか?
残念ながらどちらも間違いだ。97年、消費税が3%から5%に上がった時は、その後、不動産価格の下落は長く続いた。増税後のほうが得、という意見はこれが根拠になっているのだが、残念ながら不動産価格の推移だけを見ていると、こういう勘違いをしてしまう。不動産の専門家やFPでも勘違いしているポイントなので注意が必要だ。
山一證券という証券会社が潰れてしまい、社長が泣きながら「社員は悪くないんです!」と謝っている映像を見たことはないだろうか。これは97年に証券・銀行・生保と金融機関の破綻が相次いだ信用不安の時期を象徴する映像だ。
97年後半以降の不況は国内では信用不安が、世界ではアジア危機が発生し、景気が急速に悪化した。つまり当時の不動産価格の下落は、消費税増税の反動ではなく、景気悪化による影響が大きいということだ。現に97年半ばには一度、不動産市場は上昇に転じている。
逆の視点から考えると、購入の準備が完全に整っている人が、あえて増税後には値下がりするだろうから、と待つのもおかしな話だ。その間に希望の物件が売れてしまえば泣くに泣けないだろう。