結局、増税の前と後のどっちが良いんだ? と言いたくなってしまうだろうが、株や不動産のような市場の取引で決まる資産価格は、そんなに簡単に予想できるものではない、ということだ。これは筆者のブログ「消費税が上がると、不動産価格はどこまで下がるのか?」と「高額商品は増税後に買え」でも詳しく説明した。
では何を基準に決めれば良いのか?
それは外部要因ではなく内部要因ということになる。具体的に言えば、自身の収入は安定しているか、雇用は安定しているのか、頭金は貯まっているのか、パートナーの稼ぎはどれくらいか、子供が生まれても会社を辞めずに済むか、といった部分だ。
例えば、結果的に消費税増税前に買ったほうが価格的に得だったとする。それでも増税後に買ったほうが良いというケースはありえる。なぜかというと、損得というのは支払いがちゃんとできた場合の話であって、途中で支払いができなくなってしまえば、損か得かなどという話は関係なくなってしまうからだ。支払いができなくなれば結果的に競売や自己破産に陥り、家計は破綻し、家庭が崩壊することも珍しくない。
支払い総額、つまり損得だけに注目している時点で、途中で支払いができなくなるリスクを無視しているということだ。20〜30年先まで今の給料が安定していると自信を持って言える人が、このご時世にどれだけいるだろうか?
このように説明すれば、どんな状況であろうと「無理をして買うのは間違い」だとわかってもらえるだろう。詳しくは筆者のブログ「持ち家は資産か?」「そろそろ決着を付けたい『持ち家と賃貸はどっちが得か?』という下らない論争」で丁寧に説明している。
3.増税後の反動による値下がりはあるとは思われるが、反動への措置もある。
増税後の反動に備えて、住宅ローン減税の拡充も検討されている。住宅ローン減税とは、年末時点の住宅ローン残高の1%が、所得税と住民税の一部から差し引かれる制度だ。3000万円ならば1%の30万円が還付される。従来はローンの上限が5000万円で期間は10年、つまり1%の50万円×10年で最大500万円が減税されるような仕組みになっていた。
これが年々上限額が減り、今年は3000万円、来年は2000万円となる。この制度が増税の反動対策として、期間が15年、最大1000万円まで減税されることになるようだ。おそらく消費税の増税分は、この制度だけでも十分吸収可能だろう(ただし、これは所得税をたくさん納めている人が高額なローンを組んだ場合のみフル活用できる制度で、多くの人が1000万円まで減税されることはない)。
4.マンションと一軒家では扱いが違う。
契約から引き渡しまで時間のかかる一軒家を新築する場合も注意が必要だ。通常は引き渡し時の消費税が適用されるのだが、現状では経過措置といって、13年9月末までに契約をすれば、完成して引き渡す時期に消費税が8%に上がっていても、5%で済むという仕組みだ。同様に、13年10月1日から15年3月末までに契約をすれば、引き渡し時に消費税が10%になっていても消費税は8%で済む、ということになる。
これが経過措置で、一軒家の建築時に適用される(現状ではマンションなどは適用されない)。一軒家を建てようと考えている人は、この措置の期限直前に契約することは避けるべきだろう。申し込みが殺到して、担当者と腰をすえてどういう家をつくるか、その会社と契約しても大丈夫なのか、ゆっくり検討する時間が取れなくなる可能性が高いからだ。
5.本当に家を買っても大丈夫なのか?
家を買うと通常はその場所に20年から30年、場合によっては一生住むと考えるのが普通だろう。家を買う平均年齢は30代半ばなので、日本人の寿命を考えれば半世紀以上同じ場所に住み続けることになる。では、家を買った場所が半世紀先まで住みやすい場所である保証はあるのだろうか?