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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第12回

ネスレ、なぜコーヒーマシン50万台無償貸与?プラットフォーム戦略は成功するか?

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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ネスレ、なぜコーヒーマシン50万台無償貸与?プラットフォーム戦略は成功するか?の画像1「ネスレ日本 HP」より

コーヒーマシン50万台を無償貸与

 ネスレ日本は8月27日に開催された事業説明会で、2020年までに50万台のコーヒーマシンを無償でオフィスなどに貸し出す計画を発表しました。このコーヒーマシンは市場で購入すれば1万円前後するしっかりした商品です。

 ネスレはなぜこのようなコーヒーマシンを、無償で提供するのでしょうか?

 その背景には、ネスレが主力とするインスタントコーヒー販売の伸び悩みがあります。スターバックス コーヒーなどのカフェの流行や、コンビニエンスストアが販売するコーヒーの爆発的ヒットにより、コーヒー市場は盛り上がりをみせています。社団法人全日本コーヒー協会の統計によれば、1983年に日本人一人当たり、1週間に8.6杯のコーヒーを飲んでいましたが、2012年には10.73杯と実に2杯以上も増えているのです。

 一方でインスタントコーヒーは、1983年には5杯飲んでいたものが、12年には4.46杯になるなど減少傾向が続いているのです。特にネスレは家庭内では37%と高いシェアを誇るものの、オフィスを含む家庭外ではわずか5%と苦戦を強いられています。

 そこで、まずは無料で自社のコーヒーマシンを多くのオフィスに設置して、利用してもらおうという作戦に打って出たのです。

●勢力を増すコンビニコーヒーに、どう対抗?

 オフィス需要を切り開く上で、最近爆発的に売れているコンビニコーヒーから顧客を奪うことは重要な鍵を握ります。

 ただ、コンビニコーヒーは、例えばセブン-イレブンは本格的な挽き立てコーヒーを100円という低価格で販売し人気が高く、ネスレが顧客を自社製品へスイッチさせるためには大変な困難が伴うことは明らかです。しかし、コンビニコーヒーは店舗までわざわざ足を運ぶ必要があり、時間に追われるビジネスパーソンの事情を考えると、手軽にオフィスでコーヒーが楽しめる機会を提供すれば、十分に勝機は考えられます。かつ、ネスレのマシンで淹れるコーヒーは1杯わずか20円ほどなので、価格でも圧倒的な優位性があります。さらに、顧客がオフィスで使うコーヒーマシンに惚れ込んで、自宅でも同じものを購入するという副次効果も期待できます。

 このような理由からネスレは、莫大なコストをかけても50万台のコーヒーマシンを無料でオフィスに設置して、インスタントコーヒーの売上拡大を図ろうとしているのです。

●売り上げの安定的拡大にはプラットフォームが有効

 安定的なビジネスを展開する上で、「プラットフォームを築く」ことは有効な戦略といえます。ここでネスレにとっては、職場に設置されるコーヒーマシンがプラットフォームの役割を果たすのです。ネスレが現在無償提供しているマシンは14万台ですから、目標の50万台を達成すれば、実に現在の3倍以上の売り上げを上げる可能性を秘めたプラットフォームが出来上がる計画といえます。

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