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ネスレ、業界団体脱退から透ける危機感 コーヒー業界、なぜ岐路に?飲用機会多様化進む

文=編集部
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ネスレ、業界団体脱退から透ける危機感 コーヒー業界、なぜ岐路に?飲用機会多様化進むの画像1「ネスカフェ ゴールドブレンド」(ネスレ日本)
 インスタントコーヒー市場で7割のシェアを握るネスレ日本は、全日本コーヒー公正取引協議会、全日本コーヒー協会、日本インスタントコーヒー協会、日本珈琲輸入協会の4業界団体を退会した。

 ネスレは昨年9月、主力商品の「ネスカフェ ゴールドブレンド」などで新製法を採用。これに伴って表記も53年間使ってきたインスタントコーヒーから、英語の「溶ける」にちなんだレギュラーソリュブルコーヒーに変更した。ところが、全日本コーヒー公正取引協議会は今年6月に開いた総会で、「インスタントコーヒーではないと消費者に誤認される」として表記変更を認めなかっただけでなく、広告上もこの名称を利用できないようにするため、業界の自主ルールである公正競争規約を改めた。これにネスレが反発し、同協議会を含め、関連団体に所属したままだと新名称は使えなくなることから脱退を決めたという。ネスレがネスカフェブランドの一部商品にソリュブルと表記し始めたのは2010年。以降、分類をめぐって協議会で論争が続いていた。

 小売り店などの店頭で販売されるコーヒーには、消費者を混乱させないため、コーヒー豆から直接つくるレギュラーか、抽出液を乾燥させた粉末を使うインスタントかを表示するという業界ルールがある。コーヒー豆から直接つくるレギュラーか、抽出液を乾燥させた粉末を使うインスタントかの違いだ。ソリュブルはどう分類すべきか、結論を出せずにいた中で、ネスレは主力のゴールドブレンドなど、もともとインスタントだった全商品をレギュラーソリュブルに変えた。ネスレはこれを「インスタントとは違う新製法だ」と主張してきたが、協議会は「基本的には抽出液を乾燥させたインスタント」と結論づけ、表示を認めず、今回の脱退騒動に発展したのである。関係者によると、「業界団体側は『ソリュブルという表記なら認める』と歩み寄ったが、ネスレ側がレギュラーソリュブルにこだわり、話し合いは決裂した」という。

●縮小するインスタントコーヒー市場

 ネスレ日本はスイスの世界最大の食品メーカー、ネスレの日本法人で、日本ではコーヒーが主力。名称変更にこだわる背景に、インスタントコーヒー市場の縮小がある。同社はインスタントコーヒーの元祖で、1960年に発売したインスタントコーヒーは大ブームを巻き起こし、家庭に普及し、ネスカフェはインスタントコーヒーの代名詞になった。

 しかし今、インスタントコーヒー市場の縮小が進む。全日本コーヒー協会の統計によると、インスタントコーヒーの国内消費量は生豆換算で2010年は9.9万トンだったが、13年は9.2万トンに減った。14年1~5月は3.6万トンと前年同期より5%の減少。今年1年間で9万トン割れは必至だ。

 逆に大きく伸びているのがレギュラーコーヒーである。13年は前年比6%増の35.3万トンと過去最高の消費量を記録し、14年1~5月は15.4万トンで前年同期より5%の増加。今年1年間では36万トン台と過去最高を更新するのは確実だ。

 コーヒー市場を劇的に塗り替えたのがコンビニエンスストアである。13年1月、最大手のセブン-イレブンが店内でセルフ式ドリップコーヒー「セブンカフェ」を導入。1杯100円というお手軽価格が受けて1年強で5億杯を売り上げる大ヒット商品となった。大手コンビニ5社の合計で14年度は13億杯を見込んでおり、前年度の7億杯からほぼ倍増するという。家庭用コーヒーの定番であったインスタントコーヒーはコンビニコーヒーの快進撃にのみ込まれてしまった格好だ。

BusinessJournal編集部

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