コメダ珈琲店のある店舗で掲載された貼り紙が話題になっている。反応はさまざまだが、好意的な声が多い。4月29日、X上に投稿された1枚の写真。そこには「当店は外国人スタッフを積極的に採用しています」との文言から始まり、「温かい目で見ていただければ幸いです」とお客に訴えかける言葉で締めくくられている。
日本は過去に例を見ない速度で少子高齢化が進んでいる。生産活動の中心を担う15~64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少し続け、さまざまな業界で人手不足が深刻化している。日本商工会議所と東京商工会議所が実施した調査によると、中小企業の7割近くが「人手不足」と回答している。さらに、帝国データバンクの調査によれば、人手不足を原因とする倒産件数は昨年、260件と過去最多になった。
そこで、さまざまな業界で外国人労働者への依存が強まる傾向にある。厚生労働省が1月26日に発表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(2023年10月末時点)によると、外国人労働者数は204万8675人で、初めて200万人を超えた。外国人を雇用する事業所数も約2万所増え、31万8775所に上った。ちなみに、国籍別ではベトナムがもっとも多く、次いで中国、フィリピンの順となっている。
実際に、最近は製造業をはじめコンビニエンスストアや飲食店などの接客業を中心に、外国人スタッフを見かけることが多くなったと感じる方が多いのではないだろうか。
そんななかで、コメダ珈琲店の貼り紙が非常に温かみのある文章だとして話題になっている。
「当店は外国人スタッフを積極的に採用しております。異国の地で頑張るということを自身に置き換えると、想像を絶する努力・決意で今ここにいると感じざるを得ません。慣れてきたスタッフもいれば今月より初めて仕事をするのがコメダ珈琲のスタッフもいます。緊張でまだうまくしゃべれないスタッフもいますが温かい目で見ていただければ幸いです。店長」
みんなこんな感じでいいよね pic.twitter.com/y23gqIajCL
— Hiroki Kobayashi / 小林大輝 (@Ed_drugman000) April 29, 2024
この貼り紙がX上に投稿されると、母国を離れ、日本で働くスタッフの心情に寄り添い、お客に理解を求める文章に心を打たれたのか、「優しい店長」「応援する」など圧倒的に多くの好意的な声とともに拡散され、瞬く間に800万回以上読まれ、いいねも15万を数える“大バズり”となった。
一方で、「こんな貼り紙をしないといけないほどクレーマーが多いのか」「こんなこと言わないといけないなんて恥ずかしい」など、貼り紙の背景に、クレームを寄せる客の存在を想定して残念がる声も少なからずある。
そこでBusiness Journal編集部は、コメダ珈琲店を展開する株式会社コメダのコーポレートコミュニケーション部に、貼り紙を貼りだすことになった経緯を問い合わせたところ、「弊社にご興味を持っていただきましたこと、御礼申し上げます」として注目を浴びていること自体は受け入れつつも、取材は辞退するとの回答だった。
今後、あらゆる業界で人手不足はさらに拍車がかかる。厚労省の調査では、すでに外国人労働者を受け入れている企業の割合がもっとも高いのは「製造業」だが、「今後受け入れる予定」「検討中」も含めた「受け入れニーズ」がもっとも高いのは「宿泊・飲食業」で、次いで「介護・看護業」となっている。
もはや外国人労働者なくして日本社会は回らないほどに、外国人の労働力は必要不可欠になっているのが現状だ。厚労省は「外国人労働者は、日本の雇用慣行等に関する知識の不足や、言語や文化等の相違を踏まえた雇用管理の必要性等から、法令違反や労働条件等のトラブル等が生じやすい」との課題を指摘。そのうえで、「外国人が我が国で安心して就労・定着できるよう、特定技能外国人を含む外国人労働者の適正な雇用管理を確保するための事業主向け支援や、在留資格の特性等に着目した外国人向け支援の実施が求められている」と行政が取り組むべき施策を挙げている。
だが、行政の施策だけではなく、日本社会全体で外国人を受け入れる土壌が醸成されていくことも不可欠なのではないだろうか。
(文=Business Journal編集部)