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「24時間ぶっ続けで編集作業×2回」は普通…テレビ業界、働き方改革と無縁

文=Business Journal編集部
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「gettyimages」より

 3月18日放送のテレビ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)内で映し出された、同番組の編集作業を行う編集室のドア横に掲示された利用時間が「10:00~34:00」になっていたことが話題を呼んでいる。「34:00」という表記からは午前10時から翌日10時まで24時間にわたり編集作業を行っている様子がうかがえるが、ニュース番組などで「働き方改革」の重要性を伝えるテレビの制作現場がもっとも働き方改革が進んでいないという指摘も聞かれる。その労働実態の今を追った。

 テレビ業界は岐路を迎えている。民放在京テレビキー局5社の2023年3月期連結決算は売上高は全社、前期比で増収となったものの、営業利益は3社が減益。どの局も柱のテレビ広告収入は減少傾向にあり、ネット配信やイベント、不動産など他事業での収益確保を急いでいる。

 テレビ制作会社を取り巻く環境はもっと深刻だ。東京商工リサーチの発表によると、制作会社の昨年(23年)の倒産は9月までの9カ月間で、14年以降の10年間で最も多かった18年の13件を超えた。商工リサーチは「コロナ禍の当初は、緊急事態宣言の発令による外出自粛などで番組制作の中止や延期を余儀なくされ、制作会社の業績に大きく影響した」と分析。「長引く受注減に加え、制作コストや人件費の上昇から、小規模の制作会社を中心に倒産は今後も高い水準で推移する可能性が高い」と見ている。

24時間の編集作業を何回も

 そんなテレビ業界では長時間労働が定着していることで知られているが、上記の「24時間ぶっ続けで編集作業」というのは業界では珍しくないのか。テレビ制作関係者はいう。

「どのキー局の番組も、基本的には収録や編集作業など制作の実務はテレビ制作会社が担っており、AD(アシスタントディレクター)からディレクターまでスタッフも制作会社とフリーの人間。制作会社が編集した映像をキー局のディレクターやプロデューサーがチェックするという流れ。

 編集作業を24時間単位で行うのは業界では普通のこと。週1回放送の1時間モノのレギュラー番組だと、まずスタジオ収録本番で出演者が見るVTRを事前に収録して編集するが、その編集作業に24時間かける。その後、スタジオ収録を行い、その素材をもとに24時間の編集作業を2~3回やるという感じ。20分くらいのVTRをつくるのに、まずディレクターが自分のPCで編集してから局の編集室に入り、編集マンと一緒に24時間かけてテロップや特殊効果、音を入れていくということも珍しくない。

 編集マンは24時間でいったん作業が終わるが、ディレクターは局のプロデューサーからチェックを受けたりと他の仕事もあるため、納品まで延々と仕事が続く。一般的に週1のレギュラー番組だと、ディレクターが4人にて1人あたり月1回の放送分を担当するかたちだが、ディレクターは複数の番組を掛け持ちしているので、2~3日ぶっ続けで仕事をして何日も家に帰れないというのはザラにある。私が過去に4本掛け持ちしていたときは、番組1本あたり24時間の編集作業が2~3回あり、それが月4本入るので、半年くらい休みがなかった。

 地獄になるのが特番だ。2~3時間モノの特番でもVTRやロケの収録が放送日の1週間前というのはザラで、放送時間が長い分、編集作業も長くなるので、1回24時間の編集作業を何回もやることになる。

 もっとも、キー局の地上波番組はまだいいほうで、インターネット番組やBSなんかだと制作費もスケジュールも厳しいので、より過酷になる」

雲泥の差のテレビ局社員とテレビ制作会社社員

 気になるのは長時間労働に見合った報酬を得られるのかという点だ。テレビプロデューサーはいう。

「私がテレビ番組制作会社でADをやっていた頃は、家に帰るのが週1回という生活をして月の給料が18万円だった。ディレクターに昇格すると少し労働時間が減って30万円くらいになった。フリーのディレクターだと、20分のVTRをロケ収録から編集までこなして1本20~30万円だが、20分のVTRでも24時間の編集作業を2本こなさなければならないこともあり、ロケ分も含めると拘束時間は長い。

 これがキー局の社員になると、まったく話が違ってくる。給料が高給なのは知られているが、基本的にプロデューサーやディレクターの仕事は、出来上がった映像のチェックで、スタジオの本番収録には立ち会うものの、VTRの収録や編集には立ち会わないので、制作会社のスタッフに比べれば全然残業は少ない。大企業ゆえに社員の労働時間の管理に厳しいので長時間の残業が許されにくいという面もあるだろう。もっとも、キー局のプロデューサーやディレクターでも、編集作業に立ち会って細かく指示をする人もいるので、人によってまちまちではある」

 そんなテレビ制作の現場だが、変化もみられるという。

「キー局の子会社ではない小規模な制作会社であっても、相変わらず長時間労働ではあるものの、ADやディレクターの数を増やしてシフトを組んだりして、以前よりは社員に休日を取らせようとしている。そうしないと若手がやめてしまうというのもあるが、法律や昨今の働き方改革という社会的風潮、過労死の問題などもあり、さすがに会社としても非常識な長時間労働はマズイという危機意識を持っているのだと感じる。

 ただ、ロケとスタジオ収録をして編集をしてとなると、24時間ぶっ続けで編集作業をするといったことをやらないと放送日に間に合わないという現実がある。テレビ界全体が大勢のスタッフの長時間残業を前提として成立しており、大きく変わることはないだろう」(テレビ制作関係者)

(文=Business Journal編集部)

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