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大塚家具を滅ぼす創業家 身内の呆れた覇権&利得争い 企業経営の体なさず

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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大塚家具を滅ぼす創業家 身内の呆れた覇権&利得争い 企業経営の体なさずの画像1大塚家具ショールーム(「Wikipedia」より/Itasan)
「見ていて呆れる」

 大塚家具の内紛を見たファンドマネージャーのひとりがつぶやいた。恐らく、彼と同じ印象を持つ市場参加者は多いだろう。そして、世間一般の感覚からしても、企業の経営に家族間のもめ事を持ち込むことに、多くの人が違和感を持っているはずだ。

 大塚家具の創業者、大塚勝久会長とその娘、久美子社長の経営権をめぐる争いは、ついに27日の株主総会で決着を迎えるが、なぜここまで事態が悪化したのか。ひとつの理由は、大塚家具に所有と経営の分離の考え方と経営戦略がないからだ。本来、企業は個人の所有物ではなく社会の公器だ。この視点があって初めて、企業は利害関係者=ステークホルダーの利害を尊重し、中長期の成長イメージを市場に示すことができる。それが確立できない企業の経営は成り立たない。

●企業は創業者の所有物ではない

 大塚家具の経営陣は「企業は誰のものか」という根本的なポイントを理解できていないようにみえる。企業は、その事業領域が拡大するにつれて社会に対する責任を負う。理論的に企業は多くの株主の所有物だ。そして、企業は規模の拡大や上場を通して、消費者、取引先など多くの利害関係者に影響を与える。

 そのため、経営者は経営の専門家とは限らない株主の代理人として、ステークホルダーの利害を調整しつつ株主価値の最大化を図ることが求められている。これが所有と経営の分離の基本的命題だ。客観的な経営の執行と評価、修正のために企業統治=コーポレートガバナンスの重要性も高まっている。

 勝久氏と久美子氏の両陣営は、ガバナンスの強化を意識して社外取締役の増員を主張している。しかし、所有と経営の分離の意識が明確でない以上、かたちだけのガバナンス強化が功を奏するとは思えない。

 勝久氏と久美子氏の主張は非難の応酬に終始している。株価はプロキシーファイトの影響から上昇してはいるが、中長期的な成長期待は高まってはいないと考えられる。なぜなら、創業者一族による経営の結果、同社は優位な競争ポジションを獲得できていないと考えられるからだ。そのため、創業者が大塚家具を支配し続ければ、同社の経営リスクは高まる可能性がある。必要なものは、明確な経営戦略を提示できる人材の登用だ。

●戦略なき組織に将来はない

 大塚家具の株価を振り返ると、近年、株価は優位に上昇してこなかった。売上高も伸び悩んでいる。一方、ここ数年、同社は40円の配当を維持している。その経営状況の中で勝久会長、久美子社長ともに倍以上の増配を主張し、株主の支持を取り付けようとしている。それは経営者のメンツを保ち、創業者の利得を確保したいという現状維持の現れにほかならない。

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