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鮫肌文殊と山名宏和、と林賢一の「だから直接聞いてみた」 for ビジネス

1000円カット「QBハウス」はどこまで無茶ぶりアリか?

文=鮫肌文殊
post_676.jpgスタイリスト募集してます。※画像は「QBハウス」HPより

人気放送作家の鮫肌文殊氏と山名宏和氏が、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問を直撃解決!する連載「だから直接聞いてみた」。月刊誌「サイゾー」で連載されていた同企画(宝島社より単行本となって発売中!)が、ビジネスジャーナルにて復活! 

 今週は、鮫肌文殊氏が、1000円カットの「QBハウス」がどこまで客のオーダーを受けてくれるのか確認してみた。

[回答者]QBハウスカスタマーサポートセンター 様

 中学・高校と水泳部だったせいもあってか私の髪型はず~~~っと丸坊主である。同じ坊主の人ならわかると思うが、これ一回やってしまうとほかの髪型に戻れない。朝起きて髪型をセットする時間もいらないし、シャワーを浴びてもタオルでちょちょいと拭けば一瞬で乾く。寝グゼを気にすることも無い。とにかく髪型に関するありとあらゆる雑事から解放されるのだ。このシンプルさを味わってしまうと、もうほかの髪型に戻れない。

 わずらわしいと言えば、髪の毛が少しでも伸びるとイライラしてくるってことだけか。私はいつもコンマ5ミリのバリカンで刈っているのだが、仕事が忙しくて床屋に行けないと当然髪の毛は伸びる。コンマ5ミリが1センチになったりする。するともうイケナイ。ヒゲと同じで、そんな「不精ハゲ」が気持ち悪くてしょうがなくなる。他人から見れば「ただの坊主」なのだが、本人にしたらキムタクみたいな長髪になってしまった気分だ。なもんで、安い床屋に頻繁に通ってサッパリすることになる。

 丸坊主にされる方から言わせてもらえれば「丸坊主ほど理容師の実力がワカル髪型はナイ」と断言できる。そう、どんな世界でもシンプルなもののほうが難しい。一流の料理人が、まず最初の出汁をひく時に一番緊張するように……。私くらいの丸坊主有段者になれば、バリカンを最初に当てられただけでその理容師の実力がたちどころに伺い知れる。上手い職人さんはバリカンの動きがスムーズ。ジェントルタッチって呼ぶのでしょうか? あくまでも優しく仕上げてくれる。逆に下手なヤツだと、頭皮に引っ掛かること、引っ掛かること。微妙に痛い。ダメな理容師は、丸坊主をやらせてみればすぐにワカル。

 さて、今回のギモンは都内に大増殖中の1000円理容のQBハウスに関するギモンである。あそこって、1000円でどのくらい複雑な注文を受け付けてくれるのでろうか?

 床屋のイスに座って「一番短いバリカン使って丸坊主にして!」としか言ったことない私が聞くのも何ですが。とりあえず、直接聞いてみた。

「QBハウスさんて、1000円でどこまで客の特殊な髪型の注文に応えてくれるんですか?」

担当者 どこまでと言いますのは? 一応ご要望をお聞きして、ハサミとバリカンで対応させていただくものでしたら行なっておりますけども。

――え? じゃあ例えば、モヒカンとかもしてくれるんですか?

担当者(電話口で思わず)え? ……そ、そうですね、あのー、何か特殊なものが必要でなければ対応は……可能です。

――あ、モヒカンもOK?

担当者 はいー。ただあの、「どのようになるか」は店舗のスタッフと直接お話ししていただいたほうがわかりやすいとは思うんですが、あ、あ、はい。

――特殊な髪型とか面倒くさそうな注文があったときでも、別料金かかるとか無いんですね?

担当者 ええ、あの無いです。追加料金はありませんのでハサミとバリカンで対応できる範囲のものを全て1000円ということにはなっています。

――じゃあ、坊主にラインとかのデザイン剃りこみ入れるのも?

担当者 そーですね……。特殊な技術が必要になるものに関しては承ることができないとは思うんですけども店舗のスタッフとお話いただくのが一番早いかと思います。バリカンの歯も決まったものしかございませんので。

――じゃあ、思い切って、スキンヘッドを注文した場合は?

担当者 あっ、その対応は、3ミリからのバリカンの歯しかございませんので。はい。多分スキンヘッドですと、カミソリなどを使用するものに関してはできないです。

 聞いてみてわかったが、実は現場の理容師さんによって客の少々無理めな注文にもかなりフレキシブルに対応してくれるようだ。これは利用しない手はない。パーマやスキンヘッドは無理でも、いにしえのジョー・ストラマーのソフトモヒカンくらいなら全然オッケーのようである。料金が1000円だからって遠慮しないでバシバシ注文をつけるべし!

 でも私は行かないけどね。だって、散髪のどこが好きかって、髪を刈り終わってからのヒゲ剃りの気持ち良さ。あれに尽きるんだもの。職人技で究極にツルッツルに剃り上げられた、あの爽快感! あれこそプロに任せる醍醐味ですよ。だから聞いといて悪いけど、ヒゲ剃りもシャンプーもないとこには行かないのでありました。
(文=鮫肌文殊)

鮫肌文殊

鮫肌文殊

1965年神戸生まれ。
高校二年の春、雑誌「ビックリハウス」の第17回エンピツ賞(小説)受賞を皮切りに、賞を総なめ。若干19歳で短編小説集「父しぼり」(長征社)を発表。NHK 特集への出演を機に中島らも氏の知己を得て、放送作家活動をスタートする。
1990年、松尾貴史の勧めで上京。現在に至る。
パンクバンド『捕虜収容所』のボーカルやDJでの音楽活動。テレビメディアに関するエッセイ等でも活躍中。

Twitter:@samehada19

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