フリマアプリ「メルカリ」を利用して、さまざまな物品を詐取する行為が横行している。その手口は類似しており、常習的に繰り返しているとみられる人物もいる。それにもかかわらず、メルカリ事務局の腰は重く、抜本的な対応を取る様子はみられない。実際に被害に遭った方に話を聞いた。
「にゃーちゃん」のアカウント名でXを利用しているユーザーが11月11日、「メルカリで窃盗にあいました」と報告したところ、瞬く間にX上で拡散された。その窃盗の内容は、メルカリに新品未開封のプラモデルを出品→購入者へ送付したが、「パーツが破損している」としてキャンセル要請が届く→メルカリ事務局からも返品を受け入れるようにとの指示があり、返品受け入れ→送料は購入者負担との約束が、着払いで荷物が届く→中身は別物とゴミだったという。
その後、事務局に何度対応を求めても、「購入者が『正しい品を返送した』と確認したので、これ以上、事務局は関与しない」との姿勢で、補償もせず、取引は強制的にキャンセル扱いとされた。
この一連の流れをにゃーちゃんが投稿すると、SNS上で大きな注目を浴びた。まとめサイトにまとめられたほか、大きな影響力を持つインフルエンサーが情報を拡散したりしたことから、メルカリ事務局への批判の声が殺到。炎上状態となると、事務局は態度を一変して補償を打ち出した。
さらに、メルカリを利用して同じような被害に遭ったとの報告も相次いだ。たとえば、今年7月にiPhone13を出品したところ、購入者から返品したいとの要望があり了承したが、戻ってきたのはペットボトルが入った箱だったという報告がある。この事例でも、メルカリ事務局は購入者側の意見を優先するような対応だったといい、出品者に対しては「警察か弁護士に相談してほしい」との立場に終始している。
頻発する詐欺的トラブル、事務局は放置
この事例と酷似したトラブルは、ほかにもある。被害を訴えるのは神崎大地さんだ。Business Journal編集部は神崎さんに話を聞いた。
神崎さんは、iPhone14を相場価格の8万円で出品。それを購入者に送付したところ、「初期化されておらず規約違反だ」として返品対応を要求されたという。だが、神崎さんは事前に初期化しており、その様子を写真にも収めていたことから詐欺を疑い、事務局に相談。それに対し事務局は、返品を受けるようにと指示。納得しがたい神崎さんが「詐欺の可能性があるが、メルカリが補償してくれるのか」と問いかけたところ、「できる限りの対応をする」との回答があったことから返品を了承した。だが、送られてきたのは別物だったという。
「着払いで返送されてきた箱を開けると、まったく関係のない本が入っていました。事務局に連絡しましたが、購入者が正しくiPhoneを返送したことを確認したとして、その後はサポートできないと言われました」
メルカリとしては、個人間で物品のやり取りをしていることについて、どちらの言い分が正しいかは確認しにくいということなのかもしれない。だが、写真付きで丁寧に状況を説明しているにもかかわらず、すべて定型文でアフターフォローを拒否する旨を返信する事務局の対応に、神崎さんは憤りをあらわにする。
「同じような手口が頻発しているのに、関与を拒否するメルカリは、詐欺を黙認しているように感じます。同様の被害に遭った人には補償し、対策を立ててほしいということを何度も事務局に要求しているのですが、誠意のある対応は今のところありません」
同様の手口は頻発しているようだが、被害に遭った方はほぼ泣き寝入りしている模様だ。事務局の対応も一貫して、深入りはせず、警察か弁護士への相談を勧めるというものになっている。
「今までにメルカリで取引相手の取引履歴などは気にしたことがなかったのですが、今回、相手から返品要求があったときに取引相手のプロフィールを確認したところ、過去に取引履歴はなく、身分証明書による本人認証もされていないことがわかりました。今後、特に高額な取引になるときには相手を確認したいと思います」
神崎さんはこれまで、取引相手に制限をかけず、すぐに取引が成立する「即断購入」の制度を利用してきたが、高額な取引をする際には取引相手を選別することが重要だとの見解を示す。同時に、メルカリに対して、利用者の本人認証を必須化することと、被害に遭った際の補償を検討してほしいと要望する。
メルカリは電話相談を受け付けず、メッセージでのやり取りしか対応していないうえ、回答はほぼ定型文になっていることから、神崎さんは「利用者の気持ちを汲み取る応対ができるようにしてほしい」とも希望を語る。
メルカリは利用者が多いからこそ、トラブルも多くなっている。悪意のある利用者からすれば、詐取するターゲットも多いといえる。メルカリには、なんらかの再発防止策を立てることが求められる。
(文=Business Journal編集部)