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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第18回

大塚家具内紛、大きすぎる「失うもの」 なぜ父は娘を全力で叩き潰そうとしたのか

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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●争いで大塚家具が失うもの

 今回の経営の主導権をめぐる骨肉の争いは、大塚家具にとって今後の経営に大きな影を落とすことになりそうです。

 まず1点目は、社内が会長派と社長派に真っ二つに割れたことでしょう。一部報道によれば、全16店舗の店長と約8割の幹部、42名から勝久会長を支持する署名が寄せられたといいます。一方で久美子氏を支持する経営陣や社員も多く、3月27日の株主総会でたとえどちらかに軍配が上がったとしても、社内に大きなしこりが残ることは間違いないでしょう。

 続いて2点目は、顧客の信頼を大きく損ね、「大塚家具」というこれまで築いてきたブランドを失墜させたことです。今回の争いの原因は経営者の経営方針の違いであり、顧客が置き去りにされていることは否めません。業績が悪化したからとこれまでの顧客を見限り、まったく違う層の顧客にフォーカスしようというのです。これまで品質の高さや丁寧な接客から大塚家具を贔屓にしてきた優良客は、今後これまで通りのクオリティを提供してもらえるか不安を覚えるでしょうし、新たなターゲットとなる顧客は社内でゴタゴタのある会社からは製品やサービスを購入しようなどとは考えないでしょう。

 生産地の偽装などの顧客を裏切る不祥事ではありませんが、やはり「お金のことで揉めている会社」というイメージがメディアを通して広まると、どちらかというとネガティブな印象を持つ消費者も多くなっていきます。

 そして3点目には、今後委任状の争奪戦で株主に対しても悪い影響を及ぼす懸念があります。社員と同じように株主も会長派と社長派に分かれ、株主総会までに激しい委任状の争奪戦が繰り広げられることになりますが、両陣営はより多くの票を獲得するために積極的に動くことが予想されます。この動きを察知して、大塚家具の株は連日ストップ高を続けるなど急騰し、短期間で倍近い株価となるなど、株式市場ではマネーゲームの様相を呈しています。このような株主は会社の経営よりも、いかに大塚家具の株で儲けるかを主眼に置いており、不安定な株主として今後経営に対して悪い影響を与えることも十分に考えられるのです。

 このように、大塚家具は図らずも大きな岐路に立たされています。3月27日の株主総会でどちらが支持されるにせよ、信任を受けたリーダーが強力なリーダーシップを発揮してステークホルダーをひとつにまとめ結束を固めていかなければ、難局を乗り切ることは難しいといえるでしょう。

●大塚家具はどうすべきだったのか?

 問題がこじれ、多くの人を巻き込んだ争いに発展してしまった現在では、遅きに失した感がありますが、大塚家具は本来どうすればよかったのでしょうか?

 個人的な意見になりますが、久美子氏が創業者であり父でもある勝久氏をリスペクトし、勝久氏の意向をくんだうえで新たな道を模索すれば、問題はここまで大きくならなかったのではないでしょうか。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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