ルネサスが隠す、異例の2カ月工場停止の“不都合な理由”…経営危機下で巨額買収の暴挙
前代未聞の操業停止
車載半導体マイコンの売上高で世界第3位のルネサス エレクトロニクスが、国内外の13工場で前代未聞の操業停止に踏み切る。特に国内主要6工場の停止期間は、最大2カ月に及ぶという。
帝国データバンクによれば、ルネサスの一次下請けは390社、二次下請けを含めると3323社にのぼり、これら下請けの総従業員数(非正規社員を除く)は約20万5800人になるという。ルネサスの社員は約2万人なので、その10倍もの規模の従業員に操業停止が影響することになる。この数字からも、ただごとではないことがわかる。
では、なぜルネサスは操業を停止しなくてはならないのか。
新聞やテレビでは、米中ハイテク戦争により中国経済が失速したこと、特に産業向け半導体が落ち込んでいること、さらには過剰在庫がルネサスの財務を圧迫していることなどに原因があると報じられている。しかし、本当にそうなのだろうか。
筆者はルネサスに関する各種のデータを分析したが、現在のところ、上記の原因ではルネサスが操業を停止する事情を説明できない。しかし、窮地に陥る兆候は2018年後半にすでに現れていることを発見した。そして、その原因が2017年2月に約3200億円で買収した米半導体メーカーのインターシルにあるのではないかと考えている。本稿で、詳細を論じたい。
中国経済の失速は関係していない
ルネサスの地域別の半導体売上高推移を図1に示す。2011年に約6200億円あった日本の半導体売上高は、2016年に約2100億円にまで落ち込み、その後やや回復して2018年には約3000億円になった。
一方、中国における半導体売上高は、2011年に約1700億円あったが、2016年に676億円に落ち込み、その後、1500億円超に増大している。確かに、ルネサスの全売上高に占める中国ビジネスの割合は、約20%を占めるまで大きくなってきている。しかし、中国経済の失速によって、ルネサスの中国ビジネスに影響が出ている気配はまったくない。したがって、ここには、国内外13工場が操業を停止する根拠は見当たらない。
産業向け半導体の落ち込み
次に、ルネサスの用途別の半導体売上高を見てみよう(図2)。ルネサスは2014年第1四半期と2017年第2四半期の2回、セグメントの分類を変えている。
まず、2010年~2013年までは、主として自動車などに使われるマイコンと呼ばれる半導体、アナログ&パワー半導体、デジタル家電などに使われるシステムオンチップ(System on Chip、SoC)の3本柱で売上高が構成されていた。