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吉本興業、大株主=テレビ局が報じない経営危機…「赤字116億円」という地雷

文=編集部
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「吉本興業ホールディングス公式HP」より

 かつて東京証券取引所第1部に上場していた吉本興業の番号コードは9665だった。2010年に上場廃止になっているため、岡本昭彦社長が5時間半もの“ダラダラ会見”を行っても、株価が暴落することはない。

 芸能界と裏社会は、今でも“切っても切れない関係”にある。吉本の所属芸人の闇営業問題も、一昔前であれば、ここまで大きな社会問題となることはなかったかもしれない。しかし、今やどの世界においても、反社会的勢力との結び付きがあれば厳しく指弾される。

「吉本の経営陣は、反社会的勢力の排除に熱心ではなかった」との指摘を耳にすることがある。「吉本は東証1部上場だったとは思えないほど、コンプライアンス(法令遵守)が欠如している」と厳しく批判する法曹関係者もいる。

上場を廃止して創業家一族を排除

 吉本は1912年創業の老舗である。49年に大阪証券取引所へ上場、61年に東証に昇格した。2007年、持ち株会社体制に移行。吉本を持ち株会社とし、グループ会社を傘下に収めた。

 大きな転機となったのは09年だ。10代目社長に就いた大崎洋氏(現・吉本興業ホールディングス会長)が上場廃止を宣言し、株式を非公開とした。

 09年9月、元ソニー会長の出井伸之氏が社長を務める投資ファンド、クオンタムリープが吉本の株式を取得するために設立したクオンタム・エンターテイメントがTOB(株式公開買い付け)を実施。ファンドにはフジ・メディア・ホールディングス(HD)など在京キー局5社のほか電通、ソフトバンクなど13社が出資。買い付け代金は506億円。

 10年に上場廃止。TOBを完了したファンドは吉本を吸収合併し、非同族の新生・吉本興業が誕生した。

 非上場企業にする最大の目的は、創業家(一族の林マサ氏)の影響力を排除することにあった。上場していた時の筆頭株主は、9.8%を所有する創業者一族の資産管理会社の大成土地だった。

 非上場企業になった吉本の株主は一変した。ファンドを通じて出資した在京キー局5社が上位を占めた。筆頭株主となるフジ・メディアHDをはじめ在京キー局5社が大成土地を包囲して、創業家の影響力は完全に封じられた。大成土地でも林家は退けられ、吉本本家から社長を迎えた。

【吉本興業の大株主の持ち株比率】
フジ・メディアHD 12.13%
日本テレビ放送網 8.09%
TBSテレビ 8.09%
テレビ朝日ホールディングス 8.09%
大成土地 8.09%
京楽産業 8.09%
BM総研(ソフトバンクの子会社) 6.07%
テレビ東京 4.04%
電通 4.04%
フェイス 4.04%
(15年5月末時点)

 京楽産業はパチンコ機器のメーカーで、吉本と共同出資で番組制作会社をつくっている。フェイスは京都の携帯電話サービスで、エンターテインメント本部で吉本と提携している。

 朝日放送、三井住友銀行、ヤフー、大成建設、ドワンゴ、松竹、KDDI、三井住友信託銀行、みずほ銀行、関西テレビ、読売テレビ、東宝、KADOKAWA、博報堂、テレビ大阪なども株主だ。

上場廃止後は赤字を垂れ流してきた

 吉本は15年3月期に子会社群の評価損などで47億円の特別損失を計上。当期純損益は32億円の赤字となり、利益剰余金は140億円のマイナスとなった。このマイナスを消すため、125億円の資本金を1億円に減資した。124億円が損失の穴埋めに使われた。出資した株主がそれぞれ持ち分を減らすことになったわけで、上場会社であれば大崎社長は引責辞任を免れなかっただろう。

 今年6月の定時株主総会で吉本は、吉本興業ホールディングス(HD)へと社名を変更した。所属タレント約6000名を管理する、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの社名を吉本興業とした。この全社の資本金は1000万円で、吉本興業HDが100%出資する完全子会社である。吉本興業HDの会長は大崎氏、タレントのマジメント子会社・吉本興業の社長に岡本氏が就いた。

 旧・吉本(現吉本興業HD)の18年3月期の決算公告では、損益計算書は公開されていない。貸借対照表の要旨のみだが、一部を記載する。

「純資産の部」(単位百万円)
株主資本 12,567
資本金 100
資本剰余金 24,104
(資本準備金 12,614)
(その他資本剰余金 11,489)
利益剰余金 ▲11,636
(うち当期純利益 710)
評価・換算差額等(有価証券評価差額金など) 1,001

 当期純利益を7億円計上したが、なお利益剰余金が116億円のマイナスとなっている点がポイントだ。上場会社としての最後決算である09年3月期決算の売上高は488億円、当期純利益は6億円の黒字だった。

 ところが非上場となるとともに企業規模が膨脹し、赤字体質に陥った。125億円の資本金を1億円に減少しても赤字を解消できなかった。次は資本準備金を取り崩して利益剰余金のマイナスを消すしかない。

 旧・吉本の最後の決算となった19年3月期の決算で、マイナスをどう処理したか気になるところだが、決算公告では明らかにされていない。

 株式を公開していない“閉じられた会社”になって10年。規模はとてつもなく膨れ上がったが、数字で見る限り、経営は合格点にはほど遠い。

 吉本興業HDの大株主である民放各社は“株主責任”を追及される可能性もある。大株主には「経営陣を刷新する」強権の発動を求められることがあるためだ。

 吉本興業HDは、経営の根本が問われている。在京、在阪民放各社は“対岸の火事”として安閑としてはいられないはずだ。民放各社は、れっきとした上場企業である。それぞれの会社の株主から「吉本興業の経営に、どうコミットしたのか?」と問われたら、どう答えるのだろうか。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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